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アイアトンさんのようなフィリピン系野球選手を


水原一平氏の突然の解雇により、急遽通訳を任されることになったウィル・アイアトン氏。俄然注目が大きいが、その中でフィリピン代表選手として2013年ワールドベースボールクラシック(※1) に出場していた意外な事実が話題になった。
※予選は2012年に開催されている

MLB名鑑.comでアイアトン氏のようにフィリピンにルーツを持つ現役・元野球選手を紹介していきたい。

2013年WBC予選
小川龍也:ドラフト2位で中日ドラゴンズに入り、その後西武ライオンズでプレーしたサウスポー。母親がフィリピン人。千葉県出身でフィリピンにルーツがあることはあまり知られていなかったため、フィリピン代表選出は日本のファンの間で驚きのニュースだった。

ジョン=ジョン・ロブレス:165cmの小柄な身体からファストボールを投げ込む先発左腕。2007年のアジア選手権で日本相手に先発登板したことがある。2013年、17年のWBC予選に出場。近年は一塁手でフィリピン代表候補に挙げられている。

チャーリー・ラブラドール:2000年代のフィリピンを代表するエース右腕。国際大会では勝ち試合、大量失点した試合問わず幾度となく登板し、国に尽くした。

ジーノ・エスピネリ:純血のフィリピン人初のメジャーリーガー。テキサス州ヒューストンで生まれ、テキサス州内の大学からドラフト14巡目でサンフランシスコ・ジャイアンツに入団。2008年7月にメジャーデビューを果たし、リリーフで2勝(無敗)を挙げた。翌年以降は3年間トリプルAでプレーを続けたが再びコールアップされることはなかった。退団した翌年、WBC予選ではフィリピン代表のクローザーとして投げた。

ウラジーミル・エギア:2010年代前半~中頃に国際大会で活躍したリリーフ左腕。2013年のWBC予選ではエスピネリの前を投げるセットアップマンのような役を任され、タイ戦ではジョニー・デイモンをゲッツーに仕留めた。2017年のWBC予選はフィリピン系アメリカ人をメインに代表チームを作ったため、出番は1試合だけしかなかった。1988年生まれだがまだ現役で今も代表チームに呼ばれるほど健在。

・デボン・ラミレス:ロサンゼルス近郊出身、大学はソフモア(2年生)までUCLAに通った生粋のカリフォルニアっ子。2013年の予選ではデボン・ブライス・ラミレスの名前で出場した。打撃も得意なため国際大会には外野も兼任しており、WBC予選も投手登録だったが二刀流で出場した。大学はUCLAから2度転学してドラフト指名を目指したが夢叶わず、独立リーグで延べ5年プレーした。

アルフレッド・オリバレス:2014年に独立リーグの信濃グランセローズでプレーしたフィリピン人捕手。2017年のWBC予選に出場した。

クレイ・ラパダ:サイドスローなのかアンダースローなのか微妙なアングルから投げる変則左腕。2007~13年までメジャーでプレー。2012年にはヤンキースでシーズン70試合とフル回転した。父親がフィリピン人。

クリス・アギーラ:ソフトバンクホークスに在籍した元メジャーリーガー。フロリダ・マーリンズの強打の有望株外野手だったがレギュラー争いに敗れて契約解除。2008年に入団したホークスでは外国人枠に恵まれず消化不良のまま退団した。

・J.R.ブンダ:父親がハワイで上院議員を務めるフィリピン系アメリカ人。高校時代に野球とアメフトの両方で活躍する地元ではスター選手だった。大学のサマーリーグで心臓発作に見舞われたことがあったが、無事に復帰して卒業後は独立リーグでプレーした。2017年WBC予選ではラパダやギャリソンらを差し置いて先発1番手に指名された。

・ケビン・バンス:最高位トリプルAまで昇格した元マイナーリーガー。2017年のWBC予選でフィリピン代表に召集され、ニュージーランド戦でリリーフ登板したがボコボコにされ敗色濃厚に。一緒にフィリピン代表に選ばれた兄マットはハーバード大学でキャプテンを務め、卒業後はヨーロッパのプロ野球リーグを渡り歩いた。

・テイラー・ギャリソン:1990年生まれ。ヤンキースに7巡目指名で入団、トリプルAまで到達したリリーフピッチャー。マイナーではクローザー候補として育成されていた。双子の弟もヤンキース傘下の元マイナーリーガー。


【それ以外のフィリピン由来の選手たち】
ティム・リンスカム:サンフランシスコ・ジャイアンツ在籍時に2度サイ・ヤング賞を獲得した大物投手。小柄な体格からダイナミックなフォームで人気を博したが、同時に足腰への負担は大きく全盛期は短めだった。

・アディソン・ラッセル:シカゴ・カブスでショートを守っていた元メジャーリーガー。マイナー時代に超有望株として期待され、メジャー昇格後はショートに定着。当時有望株だったハビエア・バイエズがしばらくユーティリティ扱いを受けたのはラッセルが優先的に起用されたせいだった。
2017年にDV疑惑が浮上してバイエズと立場が逆転。19年オフにノンテンダーとなって翌年から韓国に渡った。

ボビー・シナード:第二次世界大戦後では唯一のフィリピン生まれのメジャーリーガー。1999年のシーズンオフに、妻の頭に拳銃を突き付けて逮捕されたことで知られている。懲役刑と社会奉仕活動後にロッキーズでプレーしているが、今ならメジャー復帰はアウトだろう。

・クラウディオ・マネラ:戦前のニグロリーグでプレーしたフィリピン生まれの選手。今世紀に入ってニグロリーグも大リーグの一部に認定され、遡ってマネラがフィリピン生まれのメジャーリーガー第1号になった。

・ファーハン・ザイディ:サンフランシスコ・ジャイアンツの野球部門の全権を握る編成本部長。書籍”マネーボール”に感銘を受けてビリー・ビーン元GMの下で働き、ドジャースの要職を経てジャイアンツに引き抜かれた。
カナダで生まれ、4歳の時にマニラに移住し現地のインターナショナルに通ったパキスタン系アメリカ人という複雑なルーツを持つ。信仰はイスラム教。少年時代から自分はカナダ人であると認識していて、トロント・ブルージェイズの選手たちを応援していた。

・ホリ・ホリバタ(ホリバタ ツヨシ):フィリピンで生まれ、学生時代をアメリカで過ごした日系フィリピン人。高校時代は有望投手として州の代表に選出され、ディビジョンⅠ所属のニューヨーク州立ビンガムトン大学で4年間公式戦に出場した。卒業後は選手の道には進まず、フィリピンに戻り政治家になった。

・ティム・ティーボウ 言わずと知れたアメフトの元スター選手。カレッジフットボールのMVPにあたるハイズマン賞を初めてソフモア(2年生)で受賞したことで絶大な人気を誇ったが、NFLでは活躍できなかった。2016年に唐突にニューヨーク・メッツとマイナー契約を結び、本気でメジャーリーグを目指した。トリプルAでも77試合に出場したが昇格時点で31歳だったこともあり、惜しくもメジャー昇格は果たせなかった。

キリスト教徒の両親がフィリピンで布教活動をしていたときにティムが生まれた。2020年にWBC代表に選ばれるも新型コロナの影響で延期。その後はフィリピン自体が予選対象国から外れ、ティーボウの代表デビューは幻となった。

(書き途中。)


次に来るであろうMLB用語を紹介したい


 2021年の大谷選手の快進撃から始まり、昨春のWBC制覇によって日本にもメジャーリーグの波が完全に押し寄せている。ニュースでメジャーの話題が占めるに連れ、これまで日本では馴染みがなかったMLB用語が入ってきた。

最近では「ノンテンダー」「マダックス」「ライブBP」「スイーパー」あたりが市民権を得たように思う。

そこで、MLB名鑑.comでは近いうちに日本のスポーツメディアが使い出すであろうMLB用語を挙げていきたい。

【Tier1:2024年内に定着するMLB用語】
【Tier2:徐々に浸透しそうなMLB用語】
【Tier3:条件次第で流行るかもしれないMLB用語】


【Tier1:2024年内に定着する】
今年スポーツニュースで耳にすること間違いなしの用語がこちら↓。

☆イマキュレイト・イニング
 1イニングを3者連続3球三振に斬って取ること。
 昨年どこかのテレビ局が使っているのを聞いたことがある。投手の球速が昔よりアップしたことや、ツーナッシングから1球外す行為をムダと考える人が増えたことで、かつてより9球で終わらせやすい環境になった。そろそろ本格的に使われ始めるのではないかと見ている。

☆スプラッシュヒット
参考記事:歴代スプラッシュ・ヒット本数ランキング

 大谷がナ・リーグ西地区に来たことでサンフランシスコ・ジャイアンツとの対戦が増加する。いま最もマッコビー湾に打ち込むことができるバッターは間違いなく大谷であり、実際に打ち込んだ日には大騒ぎする絵が浮かぶ。それと同時に昔バリー・ボンズが特大弾を放った映像もたびたび流れることだろう。

☆プロスペクト
 若手有望株のこと。MLBではドラフトや国際FAからの新人が即メジャーの試合に出ることはほとんど無いのに対して、NPBでは2軍を経ずにレギュラーに就くことも珍しくない。それでも最近ではポテンシャルの高い選手が育成契約から侍ジャパンレベルに成長するケースが増えてきた。またSNSでも1軍デビュー前の若手有望株に特化したアカウントが視聴数を増やしており、SNSやネット発信で”プロスペクト”の単語が広まると予想する。


【Tier2:徐々に浸透しそう】
●バックアップ
 MLBでは2010年代中頃あたりから、将来的に規定打席をクリアするキャッチャーは絶滅すると唱えられていた。昨シーズンは規定打席(503打席)に到達した選手は9人いたが、純粋にキャッチャーとして(DHやファーストでの出場を除いて)打席に立ったのは最多のJ.T.リアルミュートでも485打席に留まった。予言通り、1人でプレートを守ることが困難な時代になった。
 レギュラー野手の次に控える選手のことをMLBでは”バックアップ”という。NPBでも近いうちにキャッチャー受難の波は訪れ、その時には第2捕手のことをバックアップ捕手と呼ぶようになっているだろう。

●ユーティリティ、プラトーン起用
 ユーティリティは複数ポジションを守れる野手。プラトーン起用は野手の起用法のひとつで、打力の近い2人の野手を相手投手や試合展開に応じて使い分けるのが主流。
 MLBではユーティリティの存在が不可欠であり、NPBでも複数ポジションをこなす選手が相手の利き腕によって出場機会が増える流れが来ると予想している。

●WAR/OPS+/UZR、DRSなどセイバー系指標
 WARが完璧だとは思わないが、イメージで個々の選手を評価するのはそろそろ止めにしよう。
 OPSは広く知られるようになったので次はOPS+を、守備指標ではUZRやDRSをスタンダードにし、ゴールデングラブ賞をはじめ各種アワードが公平に選ばれることを願う。

●スイープ
 スイープとは同一カードの試合を全勝すること。3連戦が多いNPBでは3タテと呼ばれているが、そのうちスイープに置き換えられていくのではないか?と考えている。

●ストリーク
 連勝や連敗のこと。野球からほかのスポーツにも波及すると予想。

●コマンド
 コントロールが四球を出さない能力なのに対して、ストライクゾーン内の狙ったところに投げる能力をコマンドと呼んで区別している。
 だいぶ前からメジャー好きの人には馴染みのある用語ではある。

●ピッチトンネル
 バッターが判別不可能なポイントまで速球と変化球を同じ軌道で投げ分けることを「ピッチトンネルを通す」という。

【Tier3:条件次第で流行るかも】
△コンテンダー、タンキング
コンテンダー:優勝争いに参戦できる状況のチーム。
タンキング:優勝争いから脱落したチームが数年後に照準を合わせて計画的にチームを解体する行為。主力の大量放出と若手有望株の収集がセットで行われる。

 MLBでは中途半端な戦力を保有ぐらいであれば一度チームを解体することが多く、そのためなら大負けも厭わない風潮がある。昨季エンゼルスが大谷翔平を無駄遣いしたと批判を受けるのは世界一の価値を認めてこそである。

 NPBで例えると、中日ドラゴンズが今年も最下位に甘んじるようなら、FA権取得済みの高橋周平や祖父江を1軍デビュー前のリリーフ投手と交換(カープの河野佳が欲しいな)。大野雄大はSBホークスと1対4の大型トレードを敢行する(SBなら育成に原石がゴロゴロいるだろう)。アンタッチャブルなのは高橋宏斗のみで、ほかの選手の引き合いはいつでも受けて良かろう。

 そのぐらい思い切ったことをする球団が出てきたら、MLBに倣ってコンテンダーとタンキングの用語が使われるようになるだろう。
※ちなみに筆者デッドボーラーの贔屓はドラゴンズであり、最も好きな選手は祖父江投手である…

△ユニバーサルDH
 2022年からナ・リーグでもDH制が導入され、少なくとも2026年まではユニバーサルDHとなると決まっている。日本ではピッチャーが投打で活躍するところにも楽しみを見出しており、今のところ両リーグ指名打者制にはならなさそう。

△オープナー
 オープナーとは普段リリーフの投手が先発して最初の1~2回程度投げる役割のこと。2018年にタンパベイ・レイズが先発ローテを揃えられなかったが、苦肉の策でとったオープナー戦術がハマり90勝72敗でシーズンを乗り切った。
 150km/hを投げるリリーバーを全球団揃えるようになってきた今こそ、オープナー戦術を取り入れる格好の機会だ。

△ABS
 Automated Ball Strike System の略。日本ではロボット審判と訳されているが、実際はストライクボールの判定を補助するだけで、ABSの判定どおりにコールしなくてもよい。
 球速や打球速度のアップによって審判にかかる負担が増えているのは事実なのだから、堂々と機械の助けを借りて構わない。

△オプトアウト、バイアウト
 複数年契約に組み込むオプションの代表格で、途中で現契約を破棄できる権利がある。前者が選手側の権利で、後者は球団側。
 過去にノンテンダーFAで選手を手放した日本ハムファイターズが、そろそろ取り入れるのではないかとみている。


なお、MLB名鑑.comでは用語集を掲載している。こちらもぜひご覧いただきたい。

<MLB名鑑.com専属コラムニスト>デッドボーラー


歴代スプラッシュ・ヒット本数ランキング(~2023年)


 サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地、オラクル・パーク。その特徴の一つとして挙げられるのが、太平洋の海を背景に広がるライト席後方の通称マッコビー湾に飛び込むホームラン「スプラッシュ・ヒット」だ。

 開場から数えて20年以上が経過したこのボールパークで、歴代のスプラッシュ・ヒットを振り返ってみよう。

歴代スプラッシュ・ヒット本数ランキング(~2023年)
1位 バリー・ボンズ 35本
2位 ブランドン・ベルト 10本
3位 パブロ・サンドバル 8本
4位 マイク・ヤストレムスキー 6本
5位T ディナード・スパン 5本
5位T ラモンテ・ウェイドJr. 5本
7位T ※ジョク・ピーダーソン 4本
7位T ブランドン・クロフォード 4本
※ジョク・ピーダーソンはスプラッシュ・ヒットに限れば4本だが、ジャイアンツの対戦相手としても2本を記録。マッコビー湾に打ち込んだ本数はヤズと同数の6本を放っている。

ジャイアンツ以外の選手の本数ランキング(~2023年)
1位T カルロス・デルガド
アダム・ラローシュ
マックス・マンシー
3本
4位T ブライス・ハーパー
カルロス・ゴンザレス
クリフ・フロイド
カーティス・グランダーソン
ジャック・スウィンスキー
ルイス・ゴンザレス
マイク・ムスターカス
ジョク・ピーダーソン
2本

 

 まずは、歴代スプラッシュ・ヒットの本数ランキング。トップはやはりバリー・ボンズで35本を記録している。2位はブランドン・ベルトが現役最多の10本を放ち、パブロ・サンドバル、マイク・ヤストレムスキーと続いている。

 5位タイにはリードオフマンのディナード・スパンがランクイン。キャリア終盤の2016年に加入したスパンはこの年初めて2桁本塁打(11本)をマーク。翌年も12本を放ち、投手有利なはずの旧AT&Tパークでホームランを打つようになったのは興味深い。

 ジャイアンツ以外の選手で最も多いのはカルロス・デルガド、アダム・ラローシュ、マックス・マンシーが3本タイで並ぶ。マンシーは現役かつ同地区ドジャースに所属、単独首位に躍り出る可能性は充分にある。


 さらに、スプラッシュ・ヒットにまつわるトリビアをいくつか紹介したい。

【1】スプラッシュ・ヒットはジャイアンツの選手が放った打球に限る。対戦相手の選手による打球は「Other Home Runs into McCovey Cove」として別扱いされている。

【2】スプラッシュ・ヒットと”Other Home Run into McCovey Cove” を両方放ったことがある選手はジョク・ピーダーソンとライアン・クレスコの2人だけである。

【3】ダイレクトに着水した打球に限るため、手前の道路からワンバウンドして入った打球はカウントされない。

【4】未だかつて右打席から流し打った選手はいない。

なお、メジャー公式のこのページから歴代スプラッシュ・ヒットの全打席を視聴できる。ぜひオラクル・パークの魅力を体感していただきたい。

<MLB名鑑.com専属コラムニスト>デッドボーラー


30球団のチーム名の由来を紹介したい


 2023年12月、FAとなっていた大谷翔平のドジャース入団が決まった。スポーツニュースのみならずワイドショーなどでも大きく取り上げられていたが、ドジャースというチームを紹介する中で「路面電車をよける人々」という”トロリードジャース”から由来する、という紹介のされ方をしていた。

 MLB名鑑.comでも各チーム情報のカテゴリーでチーム名の由来を紹介しているが、全30球団の由来をまとめてみた。※チーム情報のページと重複する箇所があるのはご容赦いただきたい。

①生き物  
②街の象徴 
③市民   
④街の愛称 
⑤靴下   
⑥原住民族 
⑦その他  


①生き物由来 

ボルティモア・オリオールズ メリーランド州の州鳥”ボルティモアオリオール”
タンパベイ・レイズ Raysは光線だが、球団創設時の名称デビルレイズがイトマキエイ科のデビル・レイ由来
トロント・ブルージェイズ 北米東部に生息するアオカケス
マイアミ・マーリンズ フロリダ湾の海に生息しているマカジキ。
セントルイス・カージナルス ミズーリ州の州鳥ショウジョウコウカンチョウ
アリゾナ・Dバックス アリゾナ砂漠に生息するダイヤガラガラヘビ

 代表的なチーム名の由来は街を象徴する生き物だろう。ボルティモア、トロント、セントルイスの3羽は地域に生息する鳥の名前から来ている。
 なお、デトロイト・タイガースとシカゴ・カブスにも生き物の名前が付いているが、動物由来でないためここにはカテゴライズしなかった。

②街の象徴 

クリーブランド・ガーディアンズ クリーブランド市内にある”ガーディアンズ・オブ・トラフィック”
デトロイト・タイガース ミシガン州最古の陸軍部隊の愛称がタイガースだったから
カンザスシティ・ロイヤルズ カンザスシティが”アメリカン・ロイヤル・ライブストック・アンド・ホース・ショー”という家畜の品評会や馬術競技が行われるイベントの開催地だから。
ヒューストン・アストロズ ヒューストンにはNASAがあり、アストロノーツを縮めたもの
シアトル・マリナーズ 海の街を象徴する”水兵”。一般公募により決定
テキサス・レンジャース 200年以上前にルーツを持つ自警団Texas Ranger
ミルウォーキー・ブリュワーズ 醸造者。ミルウォーキーがビールの生産地として有名なため
コロラド・ロッキーズ コロラド州デンバーの象徴ロッキー山脈。
サンディエゴ・パドレス パドレはスペイン語で司祭や神父。大昔、サンディエゴを拠点にキリスト教がカルフォルニア州各地に広まっていったことから。

 生き物以外で街を象徴する”何か”を採用した球団も多い。宇宙飛行士のアストロズやビールのブリュワーズのように直感的に分かりやすいのも特徴だ。

 クリーブランド・インディアンスは人権団体からの圧力に負け、2022年のシーズンからガーディアンズに変更。コロラド・ロッキーズは1993年の球団創設時に”ベアーズ”を望むファンが多くいたが、オーナーの意向でロッキーズとなった。

③市民 

ニューヨーク・ヤンキース 昔オランダ人がニューイングランド地方の住民のことを”Jan kees”と呼んでいた
ニューヨーク・メッツ 都会人の意味のメトロポリタンを縮めたもの
フィラデルフィア・フィリーズ フィラデルフィア市民の通称”フィリー”
ロサンゼルス・ドジャース 路面電車が多く走行していたブルックリン地区の住民”トロリー・ドジャース(路面電車をよける者達)”

 大谷の移籍で話題になったドジャースのように、その街の住民が由来になっているものがある。
 ニューヨーク・ヤンキースの前身ハイランダーズはスコットランド北部の軍隊に因んでいたが、地元の新聞社がヤンキースと呼ぶようになり定着した。100年以上前の新聞社はインク代が安く済むという理由で短い愛称を好んだと言われ、ヤンキース以外にシカゴ・カブスも同じような理由でチーム名が定着している。

④街の愛称 

ミネソタ・ツインズ 本拠地ミネアポリスとセントポールが双子都市(ツインシティー)だから
ロサンゼルス・エンゼルス スペイン語のロサンゼルス(天使たち)に対する英語”the angels”
ワシントン・ナショナルズ ワシントンD.C.は政治的な中心地であり、アメリカ合衆国のナショナルなイメージを表している

 街そのものが由来になっているチームがある。多少安直な印象は否めないが分かりやすい。

⑤くつした 

ボストン・レッドソックス 赤いソックスを履いてプレーした
シカゴ・ホワイトソックス 白いソックスを履いてプレーした
シンシナティ・レッズ レッドストッキングスの略

 都市やファンベースと直接関係ないものもある。代表的なのが靴下由来のチームで、3球団が存続している(2023年現在)。
 レッズはレッドストッキングスが縮まったもの。大昔はセントルイス・カージナルスの前身ブラウンズなどがあった。また、デトロイト・タイガースはトラ柄のソックスを履いてプレーしていたからという説があるものの劣勢である。

⑥原住民族 

アトランタ・ブレーブス インディアンの羽根飾り

 原住民族に敬意を表して名付けられた例もある。アトランタ・ブレーブスの前身は19世紀より幾度となくオーナーとチーム名が変わっていたが、民主党と関わりがあるオーナーになったとき、党の組織のシンボルである”ブレーブス”(=インディアンの羽根飾り)を採用してから定着した。
 チャンスの場面で観客がやる”トマホーク・チョップ”もインディアン由来である。
 ただ、アメリカ全体でインディアン・マスコットや応援スタイルは人権団体から根強い批判を浴び続けており、2021年オフにクリーブランド・インディアンスがガーディアンスへ変更を強いられたように、ブレーブスもチーム名とロゴ変更の圧力を受けている。

⑦その他 
残り4球団はどれにも当てはまらなかった”その他”といえる。

オークランド・アスレチックス 1860年代初頭のフィラデルフィア・アスレチック・ベースボールクラブ
シカゴ・カブス 不明。若く経験が浅い選手が多かったから?
ピッツバーグ・パイレーツ スター選手を引き抜いた行為を「海賊まがい」と非難されたのを面白がった
サンフランシスコ・ジャイアンツ 諸説あり

 シカゴ・カブスは、誰がカブスと言い出したか分かっていないが、少なくとも熊が名物だからではない。1900年代初頭の混乱期に主力が流出した時期があり、若い・経験が浅い選手が多くなったことを揶揄したものと考えられている。ただ、地元の新聞社がインクの節約目的でカブスの名称を積極的に使った影響もある。

 パイレーツの海賊はこちらも1900年代初頭の混乱期、ピッツバーグ・アレゲニーズ(ピッツバーグ近郊にはアレゲニー川が流れている)がどさくさに紛れてスター選手を引き抜いた行為を「海賊まがい」と非難されたことが由来。そのままチーム名にしてしまった。

 ジャイアンツについては諸説あり、監督が”My big fellows! My giants!”と叫んだ説、チームに高身長の選手がいた説などあるがはっきりしていない。

<MLB名鑑.com専属コラムニスト> デッドボーラー


アジアプロ野球チャンピオンシップ2023 ①台湾代表


カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023 という大会が今日(11月16日)から開催される。今大会には現在メジャー契約の選手は出場しないが、今後WBCやプレミア12などの選手名鑑を作成する予定なので、練習の意味合いも込めて急遽公開することとした。各国のロスター入りメンバーを選手名鑑らしく紹介していきたい。

▼目次 – 台湾代表選手一覧
【1.投手】
【2.捕手】
【3.内野手】
【4.外野手】
【5.監督・コーチ】
【6.辞退した選手】

続きを読む アジアプロ野球チャンピオンシップ2023 ①台湾代表


WBC2023 各出場国の選手名鑑


WBC開催まであと1カ月少し。本戦参加国の代表メンバーが徐々に固まってきた。MLB名鑑.comは選手名鑑という位置づけなので、各国のロスター入りメンバーを選手名鑑らしく紹介していきたい。

まずは合宿参加メンバーが先んじて決まった台湾代表から順次アップロードしていく。

プールA
1.台湾   https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster01/
2.オランダ https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster02/
3.キューバ https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster03/
4.イタリア https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster04/
5.パナマ  https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster05/
プールB
6.日本   
7.韓国      https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster07/
8.オーストラリア https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster08/
9.中国      https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster09/
10.チェコ
プールC
11.アメリカ  https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster11/
12.メキシコ  https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster12/
13.コロンビア
14.カナダ
15.イギリス
プールC
16.プエルトリコ  https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster16/
17.ベネズエラ   https://mlbmeikan.com/wbc2023-roster17/
18.ドミニカ共和国
19.イスラエル
20.ニカラグア

by【MLB名鑑.com専属コラムニスト】デッドボーラー


2022年オールスター出場選手が決定!


現地7月19日20:00(日本時間20日午前9:00)にドジャースタジアムで行われるオールスターゲームの出場選手が出揃いました。

2020年のオールスターゲームがドジャースタジアムでの開催予定でしたが、新型コロナにより中止になったことで改めて2022年の開催地となっています。

投票の仕組みが変わったほか、”レガシー・セレクション”の出場枠が作られました。アルバート・プーホルスとミゲル・カブレラの2人がこれまでの成果を称えられ、両リーグの”33番目の男”として選出されました。これでプーホルスは12回目、カブレラは11回目のオールスター選出です。

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ア・リーグ
▼野手
先発出場(ファン投票で選出)
捕手:アレハンドロ・カーク (TOR)
一塁:ブラディミール・ゲレーロJr. (TOR)
二塁:ホゼ・アルトゥーベ (HOU)
三塁:ラファエル・ディバース (BOS)
遊撃:ティム・アンダーソン (CWS)
外野:アーロン・ジャッジ (NYY)…ア・リーグ最多得票
外野:マイク・トラウト (LAA)
外野:ジャンカルロ・スタントン (NYY)
指名:大谷翔平 (LAA)

レガシー・セレクション
指名:ミゲル・カブレラ (DET)

ベンチ入り
捕手:ホゼ・トレビーノ (NYY)
一塁:ルイス・アラエス (MIN)
二塁:アンドレス・ヒメネス (CLE)
三塁:ホゼ・ラミレス (CLE)
遊撃:ザンダー・ボガーツ (BOS)
遊撃:コーリー・シーガー (TEX)…代替選出
外野:バイロン・バクストン (MIN)
外野:カイル・タッカー (HOU)
外野:ジョージ・スプリンガー (TOR)…ケガにより辞退
外野:アンドリュー・ベニンテンディ (KC)
外野:フリオ・ロドリゲス (SEA)
指名:ヨーダン・アルバレス (HOU)…ケガにより辞退
指名:J.D.マルティネス (BOS)…代替選出

▼投手
スターター
シェーン・マクラナハン (TB)
・ジャスティン・バーランダー (HOU)
アレック・マノーア (TOR)
ネスター・コルテスJr. (NYY)
・ゲリット・コール (NYY)
・大谷翔平 (LAA)
・ポール・ブラックバーン (OAK)
マーティン・ペレス (TEX)
・フランバー・バルデス (HOU)

リリーバー
・クレイ・ホームズ (NYY)
・エマニュエル・クラッセ (CLE)
・ホルヘ・ロペス (BAL)
・グレゴリー・ソト (DET)

ナ・リーグ
▼野手
先発出場(ファン投票で選出)
捕手:ウィルソン・コントレラス (CHC)
一塁:ポール・ゴールドシュミット (STL)
二塁:ジャズ・チザムJr. (MIA)
三塁:マニー・マチャド (SD)
遊撃:トレイ・ターナー (LAD)
外野:ロナルド・アクーニャJr. (ATL) …ナ・リーグ最多得票
外野:ジョク・ピーダーソン (SF)
外野:ムーキー・ベッツ (LAD)
指名:ブライス・ハーパー (PHI)…ケガにより辞退

レガシー・セレクション
一塁:アルバート・プーホルス (STL)

ベンチ入り
捕手:トラビス・ダーノウ (ATL)
一塁:ピート・アロンソ (NYM)
一塁:C.J.クロン (COL)
二塁:ジェフ・マクニール (NYM)
三塁:ノーラン・アレナド (STL)
遊撃:ダンズビー・スワンソン (ATL)
外野:カイル・シュワーバー (PHI)
外野:スターリング・マーティ (NYM)
外野:イアン・ハップ (CHC)
外野:ホアン・ソト (WSH)
指名:ウィリアム・コントレラス (ATL)…ハーパーに替わりスタメン出場
指名:ギャレット・クーパー (MIA)…代替選出

▼投手
スターター
・サンディ・アルカンタラ (MIA)
コルビン・バーンズ (MIL)
・ジョー・マスグローブ (SD)
・マックス・フリード (ATL)
トニー・ゴンソリン (LAD)
・ルイス・カスティーヨ (CIN)
・クレイトン・カーショウ (LAD)
・カルロス・ロドン (SF)…代替選出

リリーバー
・ジョシュ・ヘイダー (MIL)…家族の事情により辞退
・エドウィン・ディアス (NYM)
・ライアン・ヘルズリー (STL)
・デービッド・ベドナー (PIT)
・ジョー・マンティプリー (ARI)

ファン投票で選出されたブライス・ハーパーはデッドボールを受けて骨折しており、ウィリアム・コントレラスが先発出場することになりました。兄のウィルソン・コントレラスもファン投票で選ばれているため、史上5組目の兄弟同時先発出場となる見込みです。

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【特集】阪神ファン必見?! メジャーで活躍するスアレス&ロハス&マルテ特集


デッドボーラーです!

今季の阪神タイガースにはスアレスとロハス、マルテという助っ人がいました。メジャーリーグには同じラストネームの選手が複数いるので、名前繋がりで紹介していきたいと思います。

◆エウヘニオ・スアレス

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シンシナティ・レッズのサードを守る主砲。2019年にベネズエラ人最多記録の49本塁打を放ち、2014年のメジャーデビューから6年連続でホームラン数を伸ばしました。ここ2年は低調で、特に今季は打率.200を下回りWARもマイナスを記録してしまいました。昨年レッズがショートの補強に失敗し、スアレスにショートを守らせる”暴挙”に出たことが悪影響を及ぼしたのかもしれません。

ホゼ・スアレス

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エンゼルスの先発ローテーションに踏みとどまったサウスポーです。一昨年は派手に打ち込まれてDFA寸前の立場でしたが、ロングリリーフからやり直した昨季は8勝8敗・防御率3.75と予想以上の活躍を見せました。ベネズエラ出身。

レンジャー・スアレス

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昨季100イニング強を投げて防御率1.36の好成績を治めたフィリーズの期待の左腕です。どの球種も同じ腕の振りからコントロールされた球を投げられるのが強みです。今季は1年通しての活躍を期待されていますが、打たれた場合は隔年投手と揶揄されてしまうかもしれません。ベネズエラ出身。

ミゲル・ロハス

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マーリンズのキャプテン的存在のショート。2020年にリーダーだったマーティン・プラドの引退後、人望があるため自然とプラドの後継者に納まりました。短縮シーズンの2020年は打撃好調でOPS.888を記録しましたが、昨季は例年通り3割台の長打率に戻ってしまいました。

ジョシュ・ロハス

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ザック・グレインキーのトレード要員としてダイヤモンドバックス入り。様々なポジションを守りながら出場機会を確保しています。アリゾナ育ちですがハワイの大学に通いました。

スターリング・マーテイ

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5ツールプレーヤーとして一線級の活躍をしている外野手です。2019年までパイレーツに所属していました。センターを守れる外野手で一番の人気物件になっていて、ここ2年はシーズン途中でコンテンダーに引き抜かれています。今季は両リーグ最多の47盗塁を記録しましたが、ホームランは12本。かつては30-30を期待された時期もありましたがパワー面で難しくなってきました。また、30代中盤に差し掛かっているので2年後にはレフトへ移っているでしょう。

◆ケテル・マーテイ

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2019年に32本塁打・OPS.981を記録したダイヤモンドバックスの主軸。2021年は春先に右ハムストリングを痛めて長期離脱のせいで90試合出場にとどまりましたが、2年ぶりの打率3割超え・OPS9割超えを達成して2019年がフロックでなかったことを証明しました。セカンドとセンターを守れるのも魅力です。110敗を喫したDバックスは今年も負け越しそうですので、来年は秋には違うユニフォームを着て打棒を打棒を振るっているでしょう。

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