WBC2023(7)イタリア代表 選手名鑑


2006年のWBCでイタリア代表としてプレーした殿堂入りキャッチャーのマイク・ピアザが初めて監督に就任したイタリア代表。WBCの代表資格の規則上、メジャーリーガーが多いイタリア系アメリカ人の招集が可能だが、今回は実績のある投手を集められなかった。突出したチームがいないプールAを勝ち抜けるか?

▼目次 – イタリア代表選手一覧
【1.投手】
【2.捕手】
【3.内野手】
【4.外野手】
【5.監督・コーチ】
【6.参加できなかった有力選手】

【投手】
33 マット・ハーベイ(FA)
 10年前は”トム・シーバーの再来”とまで言われたが、その後の転落ぶりがひどい元”ダークナイト”。2010年のドラフト1巡目でメッツに指名され、12年にメジャーデビュー。翌年オールスターに選出・9勝5敗・防御率2.27の好成績をマーク。直後にトミー・ジョン手術を受けるも2015年には復活の13勝を挙げた。ファンからの人気も絶大で”ダークナイト”と呼ばれた。
 しかし、胸郭出口症候群をはじめ何度もケガに悩まされると、”パーティー好き”で練習を疎かにするなど球威と人間性の評価が急落。19年にはエンゼルスでプレーしたが、12先発で3勝5敗・防御率7.09と打ち込まれただけでなく、急死した同僚のタイラー・スカッグスに薬物を渡していたことを認め、60試合の出場停止処分を受けた。
 往年の球威は無いが、それでも昨季はマイナーで8勝1敗・防御率3.71の成績を残した。才能は間違いなかっただけに、今年こそは立ち直った姿を見せてもらいたい。
34 ビン・ティンパネリ(レッズ傘下A+)
 レッズ傘下でプレーしている大卒リリーフ右腕。大学ではキャッチャーをメインに守る野手でマウンドに上がることはほとんど無かったが投手として育成されている。元捕手なだけあってファストボールの威力はある一方、コントロールに大いに苦しんでいる。
38 ライアン・カステラーニ(FA)
 以前コロラド・ロッキーズなどで投げていた元メジャーリーガー。2014年にロッキーズに2巡目指名で入団後、20~21年にロッキーズの先発ローテを任されホームランを打たれまくった。昨季はAAAでコントロールを大きく乱しシーズン中に解雇された。空振りが取れる決め球が欲しい。
41 ジョー・ビアジーニ(FA)
 ルール5ドラフト指名を受けてメジャーで活躍した右投げ投手。主にブルージェイズで投げ、同じイタリア代表のガビーリオと同僚だった時期がある。
 アストロズ移籍後は継投ノーヒッターを達成したこと以外は打たれた記憶しかなく、昨季はデビュー以来初めてメジャーでの登板機会が無かった。
46 サム・ガビーリオ(FA)
 輝かしい学生時代の球歴を持つ元・オレゴン州の神童。プロ入り後の成績はパッとしないが、3勝10敗・防御率5.31の記録を残した2018年は投手陣が壊滅状態の中123イニングに登板、ブルージェイズの肩を守った。
48 ビニー・ニトリ(カブス傘下AAA)
 独立リーグから這い上がりメジャーリーガーになった苦労人リリーフ右腕。シアトル・マリナーズに25巡目で入団もクビになり、独立リーグで2年過ごした。その後、30歳のときにマイナーの球団に復帰して2021年にメジャー昇格を勝ち取った。
 今季はお値段以上の価値を示してメジャー定着の1年にしたい。
53 アンドレ・パランテ (セントルイス・カージナルス)
 カージナルス期待の先発投手。2019年に4巡目でプロ入り、昨季がメジャーデビューイヤー。先発とリリーフ両方やって100イニング以上を投げ、防御率3.17と健闘した。
 今大会の代表チームではエース格の存在。ロスのディズニーランドにわりと近いところの出身。
67 マシュー・フェスタ(シアトル・マリナーズ)
 ニューヨークのブルックリン出身のメジャーリーガー。今回のイタリア代表で一番実績がある。
 2018年にメジャーデビュー、翌年の開幕ロースター入りしたもののマイナー暮らしが続いた。昨季は春季キャンプの招待選手からメジャー枠を勝ち取り、3年ぶりにメジャー復帰すると自身最多の53試合に登板。勝ち試合でも使われる充実したシーズンを過ごした。
 ヒジの故障を経て強化されたスライダーはイタリア代表の助けになるだろう。なお、これまでマット・フェスタの登録名だったが昨季からマシューに変えてプレーしている。
91 ミッチェル・ストゥンポ(Dバックス傘下AAA)
 23歳まで大学でプレーするも指名されず、ドラフト外でプロ入りした雑草リリーバー。大学では投手兼レフト兼セカンドの二刀流選手だった。
 プロ入り後は1度も打席に立っておらずリリーフとして育成され、昨季はAAAでクローザーを任され及第点のスタッツだった。メジャーまであと一歩!コントロールは最悪。
92 ジョー・ラソーサ(レイズ傘下AA)
 196cm・97kgの恵まれた体格を持つレイズ傘下のリリーフ左腕。昨季マイナーで好成績を残し期待値が上がっている。イケメン。
92 スティーブン・ウッズJr.(FA)
 レイズがエバン・ロンゴリアをジャイアンツに放出した時の交換相手の1人。昨季初めて3Aに昇格したがオフにFAとなった。
 ニューヨーク州出身で高校時代に2試合連続ノーヒッターを達成したことがある。
94 ジョーイ・マルシアーノ(ジャイアンツ傘下AAA)
 メイウェザーがヘビー級50勝の新記録を打ち立てたのは62年ぶりの快挙だったが、破られる前の記録を持っていたロッキー・マルシアノは父方の親戚にあたる。
クラウディオ・スコッティ(メッツ傘下Rk)
 イタリア・ローマ出身のマイナーリーガー。一度クビになりイタリアに帰国したが再びメジャーを目指している。先発投手。
ニコロ・ピナッツィ(レッズ傘下A)
 代表では少数派のイタリア生まれのマイナーリーガー。WBCでは先発で投げるか。
ニック・ファンティ(FA)
 2017年のWBCでもイタリア代表だった元プロスペクト。ドラフト31位ながらマイナー下位で好成績を残したが、2019年に肩を負傷。この年のレギュラーシーズンを全休すると、20年はコロナパンデミックでマイナー中止。21・22年はトミー・ジョン手術を受けたため丸4年実戦登板ゼロに終わっている。
 今回も代表に選ばれ、久々に元気な姿を見せてくれるだろうか?なお、ファンティは4人の姉を持つ5人きょうだいの末っ子らしい。
ブラクストン・ロレンツィーニ(FA)
 最高位がシングルA+の元マイナーリーガー。リリーフ投手。
ミケレ・バサロッティ(ブリュワーズ傘下A)
 昨年のU-23の国際大会ではベネズエラ代表で出場したイタリア系ベネズエラン。ブリュワーズのマイナーに所属している。先発失格の烙印を押されリリーフに転向し、昨年はAでクローザーとして結果を残した。一昨年に68イニングで25死球を与えたコントロールはある意味強力な武器だ。
【捕手】
24 ブレット・サリバン(パドレス傘下AAA)
 ダルビッシュの相棒捕手ビクトル・カラティーニとのトレードでパドレスに移籍したキャッチャー。本格的にキャッチャーをやりだしたのはプロ2年目からで、大学時代はショートを中心に内外野複数ポジションを兼任。これまでの公式戦でもサードとレフトで普通に試合に出ている。
 昨季AAAで好成績を残しており、今年メジャーデビューの可能性大。WBCではスタメンマスクを被るだろう。
41 ビト・フリシア(フィリーズ傘下AAA)
 今年メジャーのスプリングトレーニングに招待選手で参加の打撃型捕手。キャッチャー体型だが肩が弱く、将来的には将来的には一塁手に転向する可能性あり。実際、マイナーでは一塁・三塁のほか両翼での出場も多い。
59 ドミニク・ミログリオ(Dバックス傘下AAA)
 キャッチャー向きの優しそうな顔をしている若手捕手。カリフォルニアっ子。アマチュア時代にドラフトに3回掛かってプロ入りした。
 サリバンと同様、昨季AAAで好成績を残し今年中のメジャー昇格の可能性が高い。
【内野手】
アルベルト・ミネオ(パルマ/イタリア)
 イタリアで生まれ、現在は母国リーグで野球を続ける元マイナーリーガー。2012年に17歳のときにルーキーリーグでスタートし、最高でAAAまで到達したがAA以上では苦しんだ。
8 ニッキー・ロペス(カンザスシティ・ロイヤルズ)
 若いが玄人好みのプレーをする野球巧者。昨季は攻守ともに不調も21年には打率.300、守備でもア・リーグ遊撃手トップの守備率.987をマークした。
9 ビニー・パスカンティーノ(カンザスシティ・ロイヤルズ)
 新人ながら期待以上の働きをみせたロイヤルズの主砲。2019年のドラフト11巡目入団と元々評価は高くなかったが、昨季6月下旬にメジャーデビューすると難なくメジャーに適応。打率.295・10本塁打・OPS.833の好成績を残した。193cm111kgの体格だがパワー一辺倒ではなく、昨季三振数を上回る四球を選んでおり、逆方向に打ち返す技術も光る。
20 マイルズ・マストロブオニ(シカゴ・カブス)
 昨季オフにカブスにトレードされた好守巧打の内野手。打撃は空振りしない技術を持ち、守備では二遊間だけでなく内野をどこでも可能。マイナーの宝庫のレイズでは人員整理のため止む無く放出されてしまった。
22 デービッド・フレッチャー(ロサンゼルス・エンゼルス)
 大谷と同僚でおなじみの内野手。エンゼルスではセカンドでの出場が多かったが今季はショートに回る予定。
82 ローベル・ガルシア(FA)
 ドミニカ共和国で生まれイタリアに帰化したホームランヒッター。16歳でアメリカに渡ったがシングルAより上に上がれず。一度イタリア国内リーグに移り、再度アメリカに渡ってメジャー昇格を勝ち取った。
 2019・21年にメジャーに上がり、メジャーの残れるだけの結果は残せなかったが随所にパワーを発揮、AT&Tパークではスプラッシュヒットを放った。
91 ジョン・バレンテ(タイガース傘下AAA)
 セカンドとサードをメインに守る巧打の内野手。パワーに欠けるが率を残せるコンタクト能力と選球眼に定評があり。走力も高い。今季メジャー初昇格を狙う。
 憧れの選手はデレク・ジーターなだけにショートを守れるようになって出場機会を増やしたい。母校のセントジョンズ大学は文武両道を意識して入学し、ちゃんと学位を取得して卒業した。
【外野手】
23 サル・フレリック(ブリュワーズ傘下AAA)
 今年の各媒体の有望株ランキング100位以内に入っているブリュワーズのトッププロスペクト。WBC参加選手の中では一番ランキングの順位が高い。身長178cmとアンダーサイズだがアメフトでも大学から引く手あまただったアスリート性が強みである。
 昨季はプロ入り2年目ながらとんとん拍子にAAAまで到達し、AAAでも200打席以上立って打率.365のハイアベレージを記録した。評価が高騰しすぎな感もあるが楽しみな選手なのは間違いない。
78 ベン・デルシオ(カブス傘下AAA)
 昨季終盤にメジャーデビューした俊足好守の外野手。昨季は終盤にはメジャーに上がると打撃はダメだったが、限られた出場機会の中得意の守備と走塁で爪痕を残した。
 センターを中心に外野3ポジションを守れる。今大会では下位打線でセンターを任されるか。
 大卒だが、高校生の時に野球とアメフト両方でドラフト指名されるも進学し、大学ではドラフト指名されずFA扱いでプロ入りしたちょっと変わった経歴を持つ。
ドミニク・フレッチャー(Dバックス傘下AAA)
 デービッド・フレッチャーの弟。2019年にプロ入り後、昨季AAとAAAで好成績を残してメジャー40人枠に入った。兄と似たような小柄な体格をしているが、兄と違って外野を守る。
【監督・主なコーチ】
監督 マイク・ピアザ
 ドジャース時代の野茂英雄とバッテリーを組んだことで有名なイタリア人元メジャーリーガー。父方の祖先がシチリア島出身。
 投手有利な本拠地でのプレー期間が長かったにも関わらず通算427本塁打・打率.308・OPS.922の素晴らしい打撃成績を残した。2016年には有資格者になって4年目にアメリカ野球殿堂入りを果たした。ドラフト62巡目でのプロ入りは最も低い殿堂入り選手となっている。
 WBCには2006年に選手として出場。09・13年にコーチを務めた。
ジェイソン・サイモンタッチ(ブルペンコーチ)
 2000年代にメジャーで投げていたイタリア系アメリカ人元投手。引退後はマイナーの投手コーチを歴任しており、指導者歴が長くなってきた。
クリス・デノルフィア(三塁ベースコーチ兼打撃コーチ)
 メジャーで10年、36歳までプレーした元外野手。欠点が少なく、安定した打率を維持していたがレギュラーらしいレギュラーにはなれなかった。また、アワードとは無縁だったが3ポジション守れる外野守備は堅かった。
 2009・13年のWBCに選手として参加。2020年から2Aの球団の監督を務めている。
【参加できなかった有力選手】
アンソニー・リゾ(ニューヨーク・ヤンキース)
ブランドン・ニモ(ニューヨーク・メッツ)
トレイ・マンシーニ(シカゴ・カブス)
ジョーダン・ロマーノ(トロント・ブルージェイズ)
いずれも故障の影響で辞退。