WBC2023(4)オーストラリア代表 選手名鑑


過去のWBCより戦力的には劣っているが、国内リーグのオーストラリアン・ベースボール・リーグ(ABL)は11月~1月がシーズンのため、大会に向けたコンディション調整がしやすいのが強み。

▼目次 – オーストラリア代表選手一覧
【1.投手】
【2.捕手】
【3.内野手】
【4.外野手】
【5.監督・コーチ】
【6.参加できなかった有力選手】

【投手】
ティム・アサートン(ブリスベン/豪州)
 オーストラリア代表の投手のリーダー格を担う、33歳の先発右腕。2011~15年までマイナーリーグでプレーした。
 2011年からツインズと契約し、マイナー下位を順調にクリアしていく。しかし14年に初めて上がったトリプルAで1イニングに6失点の大炎上。即降格させられ、それ以降はチャンスらしいチャンスが無いままクビになりオーストラリアに帰国した。母国ではエース級の先発投手として毎年活躍し続けている。
リアム・ドーラン(ドジャース傘下Rk)
 196cm/104kgの大型リリーフ右腕。あまり見た目のことを言ってはいけないが、24歳には思えない風貌をしている。
 155km/h前後のファストボールが魅力の粗削りな原石で、昨季8月にドジャースと契約を結んだ。昨秋行われたの侍ジャパン強化試合で好投しており、勝負所で投げるチャンスがあるかも。
カイル・グロゴスキー(レッズ傘下AAA)
 ニュージーランドのエース的な存在の先発右腕。ナックルカーブが決め球。今季からシンシナティ・レッズ傘下に移籍する現役のマイナーリーガーで、史上3人目のニュージーランド人メジャーリーガーを目指している。体格が大きくないこともあり先発投手としての期待値はあまり高くなく、先々はリリーバーへ転向する時期が来るかもしれない。
 2016年に行われたWBC予選では17歳ながらニュージーランド代表として出場していたが、成長期にオーストラリアで暮らした時期があり、代表チームからのオファーを受諾。昨年からオーストラリア代表として出場している。
ジョシュ・ガイヤー(シドニー/豪州)
 豪州リーグのシドニー・ブルーソックスで10年以上投げている先発右腕。年によってピッチングフォームが定まらず、特にコンディション不良のシーズンはストライクが入らない。
 20代前半のときにマイナーリーグで3年間プレー経験があるが、ルーキーリーグより上にあがれなかった。U-18,21,23代表や19年プレミア12では主力投手として起用された。
サム・ホランド(ブリスベン/豪州)
 オーストラリア第3の都市ブリスベンのチームでプレーする地元産サイドスロー右腕。豪州リーグではスイングマンの役割だがWBCではリリーフとして起用される見込み。U-18代表で投げていたところをサンディエゴ・パドレスのスカウトの眼に留まり渡米、2013~17年にマイナーリーグ下位でクローザー候補として育成されていた。
ジョン・ケネディ
 ブレーブスに縁があるのか、アトランタ・ブレーブス傘下のマイナーと栃木ゴールデンブレーブスに所属していた長身リリーフ左腕。メルボルンっ子。速球は140km/hほどだがコントロールに優れる。
 元マイナーリーガー叔父は長年オーストラリアの野球の発展に貢献してきた人物で、叔父の紹介で大リーグに挑戦することになった。AAまで昇格したが解雇され、2019年にBCリーグの栃木と契約。勝ち試合に登板するリリーバーとして活躍し契約延長を勝ち取ったが翌年新型コロナのせいで来日できず、メルボルンに帰ることになった。
スティーブン・ケント(メルボルン/豪州)
 17歳の時から代表に選ばれ続けているベテラン先発左腕。33歳。マネーピッチはカーブ。WBCは3大会連続の代表入りとなった。アトランタ・ブレーブスのマイナーにいたことがあり、AAでは好投していた。
 2019年には所属するキャンベラとDeNAベイスターズの交流の一環でDeNAの春季キャンプに参加したことがある。このとき一緒に参加したのが日本の独立リーグに所属したスティーブン・チェンバース投手で、チェンバースに選手兼通訳をしてもらった。
ダニエル・マグラス(メルボルン/豪州)
 ボストン・レッドソックス傘下のAAAで投げた経験がある技巧派左腕。メルボルンの高校在学中に先発の有望株としてレッドソックスと契約し、翌13年からキャリアをスタート。19年にAAポートランドで3投手による継投ノーヒッターに絡むと、AAAまで到達。2試合登板してAAに降格後、翌年の新型コロナによるシーズン全休を最後にオーストラリアに帰国した。
 190cm超の長身、高いレッグキックと球持ちが長い投球フォームは効果的。ファストボールは常時130km/h台しか出ないが、評価の高いチェンジアップとスライダー、カーブの全球種をストライクゾーンにコントロールできる。球威の無さをいかに補うかにかかっている。
ミッチ・ニューンボーン(アメリカ独立リーグ)
 隠れた二刀流選手。2020-21年の豪州リーグの新人王を獲得した先発兼ロングリリーフ。140km/h後半の速球とナックルカーブのほぼツーピッチで三振を奪う。
 一時期渡米してアイオワ州にあるコミュニティカレッジに通っていた。大学生で構成するサマーリーグに1年だけ参加し(2018年)、93打席に立って打率.291・9本塁打・OPS1.071の好成績を残している。
ジャック・オローリン(タイガース傘下A+)
 デトロイト・タイガース傘下に在籍中の現役マイナーリーガーで、196cm/100kg超の大型先発左腕。今年久々に参加した豪州リーグで活躍し、地元アデレードを優勝に導いた。
ワーウィック・サーポルド(パース/豪州)
 デトロイト・タイガースで3年、通算82試合に登板した元メジャーリーガー。タイガースをDFA後は韓国に渡り、ハンファ・イーグルスで2019~20年は2年連続2桁勝利を挙げた。
 140km/h台中盤のツーシームとカットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップと持ち球は多彩。全盛期に比べるとさすがに球威が落ちていて、制球力で勝負するタイプではないのでWBCではバッピになる危険も。
 タイガース時代、ニックネーム入りのユニフォームを着るプレイヤーズ・ウィークエンドでサーポルドは”オージー”と入れて出場した。アメリカでプレーしていたときもレギュラーシーズンが終わるとオーストラリアに住んでいたことが由来だそうだ。
ウィル・シェリフ(ダイヤモンドバックス傘下Rk)
 2021年にアリゾナ・ダイヤモンドバックスと契約したリリーフ左腕。球速は遅いが一瞬浮き上がるようなカーブは左右両打席相手に通用するマネーピッチだ。
ブレイク・タウンセンド(マリナーズ傘下A)
 恵まれた体格をしているリリーフ右腕。2019年からマリナーズ参加のマイナーで投げており、昨季はA+からAAAに飛び級昇格した。
トッド・バンスティーンセル(アメリカ独立リーグ)
 ファウルラインを絶対に踏まないポリシーを持っているリリーフ右腕。ツインズ傘下のAAでプレーしたほか、独立リーグやメキシカンリーグ、オランダで過ごしたこともある正真正銘のジャーニーマンでもある。
 元巨人のマット・シューメイカー激似の投球フォームから150km/hに迫る速球とスライダーで三振を奪う。だが、近年は球威に衰えが見られ、球数がかさむイニングが増えつつある。
 10年前に接触プレーを巡って大乱闘を引き起こしたり、同じくWBC代表のルーク・ウィルキンスと遠征先でバスケをやっている最中に肩を脱臼しシーズンを棒に振ったりとお騒がせ選手でもある。今でも闘志を前面に押し出すスタイルで、今大会で何かあるかもとひそかに期待している。
ルーク・ウィルキンス(アデレード/豪州)
 シドニー生まれの右投げリリーフ投手。オーストラリアの大学を卒業後に渡米してコミュニティカレッジに入りなおしたが、メジャーのドラフトにはかからなかった。豪州リーグがオフの間、アメリカの独立リーグでプレーしていた年があるがMLB傘下の球団は未経験。現在、豪州リーグ3球団目のアデレードでは結果を残せておらず、WBCでは使いずらいかも。
【捕手】
ライアン・バタグリア(ブリスベン/豪州)
 昨季豪州リーグでは絶不調も代表に選考された守備型捕手。元マイナーリーガーでインディアンス傘下に所属、最高位はシングルA+。2016年にはBCリーグの石川ミリオンスターズでプレーした。打撃は苦手。
アレックス・ホール(ブリュワーズ傘下A+)
 ミルウォーキー・ブリュワーズ傘下のシングルA+に所属するキャッチャー。AAに昇格したことはないが、昨季途中に正捕手オマー・ナルバエスが新型コロナの故障者リスト入りした穴埋めに1試合だけメジャーに帯同した。パース出身のためオフシーズンに毎年豪州リーグのパース・ヒートの選手として出場し、2022-23年の豪州リーグではキャリアハイの8ホーマー・OPS1.000超えを記録する大活躍を見せた。
ロビー・パーキンス(キャンベラ/豪州)
 数年前にコロラド・ロッキーズ傘下でメジャーを目指していたキャンベラ出身のキャッチャー。2018-19年に豪州リーグに参加した今永昇太とバッテリーを組み、6試合で4勝無敗・防御率0.51の好投を引き出した。
【内野手】
ジェイク・ボウイ(パース/豪州)
 豪州代表の中では数少ないホームランが期待できるパワーヒッター。捕手と一塁手をこなし、一応リリーフで登板することも可能。アストロズ傘下のマイナーにいたことがあるがルーキーリーグ止まりだった。
ジャリッド・デール(パドレス傘下A+)
 昨季までサンディエゴ・パドレスのマイナーでプレーしていた遊撃手兼二塁手。二遊間の守備範囲は広い。
 アメリカでは最高3Aまで昇格し、打席では待ち球系で多くのフォアボールとその倍以上の三振を量産した。そしてなぜか豪州リーグに戻ると出塁率低めの早打ちに変身する不思議なバッター。決してパワーヒッターではなく長打はあまり期待できない。
ダリル・ジョージ(メルボルン/豪州)
 かつてBCリーグのアルビレックス新潟とオリックスの二軍に在籍していたユーティリティ。投手も含め、キャッチャーとセンター以外では何試合も守った経験がある器用さが長所。肩も強い。
ロビー・グレンディニング(ロイヤルズ傘下AA)
 カンザスシティ・ロイヤルズ傘下でプレーしている強打の内野手。プレミア12ではクリーンアップを務め、昨季AAで19本塁打を放った。守備は内野4ポジションすべて守れるが一塁以外は・・・。
 学生時代からメジャーリーガーを夢見てアメリカ留学をし、短大卒業後にマックス・シャーザーらを輩出した強豪ミズーリ大学に編入。ドラフト指名されてプロ入りしている。
リアム・スペンス(カブス傘下A)
 強豪テネシー大学に留学しドラフト5巡目でプロ入りした内野手。コンタクトヒッターで三振が少ないわりにフォアボールを選ぶ能力に優れているが、あまり強振せず長打を捨てたバッティングを心掛けているように見える。
ローガン・ウェイド(ブリスベン/豪州)
 ホームランバッターではないが長打が打てる内野手。ショートがメインポジションだが身体能力に頼りがちな怪しい守備をする。ミネソタ・ツインズのマイナー下位で低打率に喘ぎシングルA+止まりに終わった。
リクソン・ウィングローブ(フィリーズ傘下A+)
 196cm/117kgの見た目通りの長距離砲。フィラデルフィア・フィリーズ傘下のシングルA+に所属しメジャー昇格を目指している。一塁専任の左バッターで対左投手に弱く、空振り率・三振率がかなり悪い。
【外野手】
ウリック・ボヤースキー(パース/豪州)
 南アフリカ生まれオーストラリア育ちのブンブン丸。2~3歳の頃に南アからパースに移住し13歳から野球をやり始めた。その後、デトロイト・タイガースのアジア担当スカウトに見い出されてアメリカに渡った。
 身体能力は抜群で速いスイングから放たれる打球速度はタイガースのマイナー随一だったが、あまりにフリースインガー過ぎてマイナー上位に引き上げることが出来なかった。
 昨オフにタイガースをDFAとされ、出戻った豪州リーグではうっぷんを晴らすかのようなバッティングを披露。38試合で打率.352・8本塁打・OPS1.031の凄まじい結果を残した。
アンドリュー・キャンベル(ブリスベン/豪州)
 俊足で細身だがホームランを打つ技術を併せ持つ元マイナー中堅手。外野3ポジション可能な守備力は自信あり。
アーロン・ホワイトフィールド(エンゼルス傘下AA)
 2020年にMLBデビューしている俊足好守の外野手。昨季は大谷翔平と同じエンゼルスでプレーしていたため日本でも知名度がある。
 オーストラリアで生まれ育ったが父親がニュージーランド人、母親がオーストラリア人。両親ともに母国のソフトボールの代表選手で、アーロン自身もソフトボールから野球に転身した。
ティム・ケネリー(パース/豪州)
 豪州リーグ歴代最多安打記録を持つチームの精神的支柱。今回のWBCでも順当にキャプテンを務める。
ジョーダン・マッカードル(アデレード/豪州)
 長打が魅力だがバットにボールが当たらないパワーヒッター。かつてアリゾナ・ダイヤモンドバックスと契約したが三振が多すぎてシングルAに上げてもらえなかった。一塁と両翼のほか、緊急時にマスクを被る変則ユーティリティでもある。
【監督・主なコーチ】
監督 デーブ・ニルソン
 ディンゴの登録名で中日ドラゴンズに1年だけいた元捕手兼外野手。日本では18試合で打率.180・1本塁打に終わったがメジャーでの実績は凄い。ドラゴンズに来る直前まで6年連続2桁ホームラン、特に前年はキャリアハイの21本塁打・OPS.954の好成績を残していたが2000年のオリンピックに出たいという理由でメジャー球団と契約せず来日した。
 日本ではさっぱり(そもそもやる気が無かった?)だったが同年秋のオリンピックで打ちまくり、4年後アテネオリンピックでは日本を2度破り初めての銀メダル獲得に貢献した。
 日本でダメ外国人のレッテルを貼られているが母国では英雄であり、2008年にイアン・ソープと一緒に国のスポーツ殿堂入りを果たした。
バッテリーコーチ マイケル・コリンズ(ヒューストン・アストロズ コーチ)
 まだ30代だがメジャー球団のコーチを務める元キャッチャー。キャンベラ出身の元オーストラリア代表、WBCには2006・09年に出場している。
 2011年限りで現役を退くと豪州リーグで監督を歴任し優勝を経験。その後アストロズのブルペンキャッチャーを経てバッテリーコーチに異例の出世を果たした。昨年はアストロズがワールドチャンピオンを制し、オーストラリア人初のメジャーの監督への道が近づいた。
投手コーチ グレアム・ロイド(メルボルン・エース 投手コーチ)
 1990年代からメジャーで10年活躍したリリーフ左腕。現役時代はいわゆる左殺しのスペシャリストで、ヤンキース時代に2度ワールドシリーズ制覇に貢献。ヤンキースがロジャー・クレメンスを獲得した際のトレード要員になった。
 2000年はグレアムにとって悲劇の年で、肩の故障でシーズンを全休し、プライベートでは奥さんを26歳の若さで失った。翌年メジャーの舞台に戻ったグレアムはトニー・コニグリアロ賞を受賞した。03年に引退後はオーストラリアに帰国して指導者となり、現在はメルボルンの投手コーチを務める。
【参加できなかった有力選手】
リアム・ヘンドリクソン(シカゴ・ホワイトソックス)
 メジャーでも1,2を争うクローザー。100マイルに迫るファストボールと変化量の大きい2種類のスライダーで空振りを奪い吠えまくる。
 今大会の決勝トーナメントから出場する噂があったが、年明けに悪性の非ホジキンリンパ腫に罹患していることを公表。事実上WBC参加は難しくなった。
ルイス・ソープ(FA)
 昨季途中までミネソタ・ツインズに所属していた27歳のサウスポー。マイナー時代に有望株100位以内にランクされる期待の先発候補だったがケガが多く、メジャーには上がれたが3年間で24登板にとどまっている。昨季3Aで2回途中8失点とボコられて即DFA、独立リーグ行きとなっていた。
 WBCでアピールしてメジャー再挑戦を期待したが、今季もコンディション不良のようで代表入りはならなかった。
 メルボルンの自宅にカンガルーを飼っている。
クリス・オクスプリング
 2006年に阪神タイガースで投げていた超ベテラン先発右腕。というより大会期間中に46歳になるのでプレイングコーチと言った方が正しいか。コロナ渦になってしばらくプレーしていなかったが、昨冬22-23年の豪州リーグで現役復帰。13試合4先発で防御率2.15・奪三振率8.9をマークし予想以上に奮闘した。
 一部報道でオクスプリングが今大会のオーストラリア代表に選ばれたと報じられるなど情報が錯綜した。
カーティス・ミード(レイズ傘下AAA)
 メジャー昇格待ったなしのレイズの有望株。代表入りなら3番か4番を打たせるだろうがケガで出場不可。これは痛い!

by【MLB名鑑.com専属コラムニスト】デッドボーラー