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ブライアン・ウー


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Bryan Woo (フルネーム/Bryan Joseph Woo)

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2000-01-30生|188cm93kg|先発 右投右打

出身地/アメリカ合衆国 カリフォルニア州オークランド

ドラフト/2021年SEA6巡目(全体174位)指名

メジャーデビュー/2023-6-3
■選手紹介

ノビのあるファストボールに自信を持つ右投げ先発投手。ドラフト6巡目だがポテンシャルを高く評価され、プロ入りから2年足らずでメジャーの舞台にたどり着いた。名前のとおり中華系がルーツと思われるが正確な情報は知れ渡っておらず、詳細が待たれる。

ウーはカリフォルニアのベイエリア、オークランド近くの小さな町アラメダで生まれ、サンフランシスコ・ジャイアンツファンとして育った。5~6歳から野球を始めて内野をメインに守ってきたが、地元アラメダ高校3年生のときにチーム事情で投手を任される。エースになったウーは8勝2敗・防御率1.25を記録し、アラメダ高校をリーグ優勝に導き自身もMVPに選ばれた。ただ投手としては遅咲きだったために注目度は高くなかった。

ウーのもとには複数の大学から奨学金付きの誘いが来たが、その中で(二刀流でなく)投手専任でオファーしてきた唯一の大学だったカリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校に進学した。大学では先発兼ロングリリーフの役割で出場した。ジュニア(3年生)の公式戦で右ヒジを負傷し残りのシーズンを欠場、2021年4月にトミー・ジョン手術を受けた。3ヶ月後、ドラフトでシアトル・マリナーズから予想外の6巡目(全体174位)指名を受けて入団した。

リハビリ中の状態でプロ入りしたウーだったが、翌年ルーキーリーグに初めて登場すると高い奪三振能力と安定した投球内容を見せ、マイナー下位を早々に卒業する。2023年開幕を迎えたダブルAでも9試合に先発登板し44回・防御率2.05・被安打27・奪三振59の優秀な成績を残し、6月にトリプルAを飛び越えてメジャーにコールアップされた。限られた球数のなかで次第に6回前後まで投げる試合を増やし、コンテンダーの先発ローテーションの座を勝ち取った。

【投球スタイル】
ややシュート回転が掛かりながら浮き上がるフォーシームが一番の持ち球で、コースを狙わず思い切り投げ込むこともある。横方向に滑るシンカーとともに平均95マイル超を計時し、この2つの速球を70%前後投げている。ほかにカットボールとスライダー、チェンジアップを使う。スライダーとチェンジアップの精度は低く、特にチェンジアップは思い通りにコントロールできておらず、メジャー昇格後の対左打者の対戦成績が今季(2023年)被打率3割台・被OPS.900超えと打ち込まれている原因になっている。マイナー下位でプレーした2022年も左打者に派手に打たれていたが、翌年のAAでは大きく改善させた実績があるだけに、チェンジアップの制球力を磨けばローテーションの上位を任せることも可能だ。

【その他】
2021年に6巡目でプロ入りしたウー。この年のマリナーズはモックドラフト(ドラフトの事前予想)と乖離する指名を幾度となく繰り出し、1~3巡目に全員高校生を指名する傍ら4巡目以降にはポテンシャル重視の大学生を集めるジェリー・ディポト編成部門長の意思のこもったドラフトが展開された。まだ2年しか経っていない段階だが、23年5月にもウー以上にギャンブル要素が高かったブライス・ミラー(21年4巡目)が一足先にメジャーデビューしている。またWBCイギリス代表として活躍した1巡目のハリー・フォードも順調に評価を高めており、21年ドラフト組は大豊作となる雰囲気が漂っている。

寄稿日:2023-09-11 最終更新日:2023-09-11
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼祖父母や元同級生たちが見守るなかジャイアンツ相手に好投するブライアン・ウー

▼大谷翔平に18号HRとなる弾丸ライナーを浴びるブライアン・ウー

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 勝 敗 セ 防御率 イニング 安 責 本 四 死 三振 WHIP K/BB

(~2022年メジャー経験なし)


アンドリュー・アボット


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Andrew Abbott (フルネーム/Andrew Cole Abbott)

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1999-06-01生|183cm87kg|先発 左投左打

出身地/アメリカ合衆国 バージニア州リンチバーグ

ドラフト/2021年CIN2巡目(全体53位)指名

メジャーデビュー/2023-6-5
■選手紹介

2023年に鮮烈なメジャーデビューを飾り好投を続ける実戦向きな先発左腕。フォーシームの球速が平均レベルなこともあり決してトッププロスペクトではなかったが、デビュー戦を6回1安打無失点で勝利したのを皮切りに最初の6先発で4勝無敗・防御率1.21・奪三振率10.13・被打率.155を記録し一気に新人王候補に名乗りを上げた。なお、同じサウスポーだったせいか隻腕投手として知られたジム・アボットの息子と勘違いしそうになるが血縁関係は無し。

バージニア州で生まれ育ったアボットは地元ハリファックス郡高校からバージニア大学に進学して3年間をリリーフ投手として活躍。ジュニア(3年生)ではベースボール・アメリカのドラフト有力選手132位にランクされ、2020年のドラフトで例年であればプロ入りするはずだった。しかし、コロナパンデミックの影響でドラフトが5巡目指名までに縮小されることになり、当日160人指名されたが最後まで名前は呼ばれなかった。これに奮起したアボットはシニア(4年生)に先発投手へ転向すると大ブレイクを果たし、翌年のドラフトでシンシナティ・レッズから2巡目指名を受けて入団した。

入団後は2年でトリプルAAAまで到達すると、2023年6月にハンター・グリーンの負傷者リスト入りに合わせてメジャー初昇格。デビュー戦で6回を被安打1・無失点・4与四球・6奪三振とスタンディングオベーションを受けるほど圧巻の内容で初勝利を挙げる。その後も好投を続けレッズの先発ローテーションに定着した。

フォーシームは92マイル後半とメジャー平均程度だがカーブ、スライダー、チェンジアップの3球種を巧みにミックスして三振を奪う。大学時代からスラーブに近い動きをするカーブを高く評価されてきた。また、プロ入り後に使用頻度を上げたスライダーと課題があると言われるチェンジアップも2ストライク後に投じるとメジャーの打者相手によく機能している。バラツキの多いチェンジアップの制球力を磨きたい。

ちなみに大学時代は学業成績にも優れ、生物学の学位を3年で取得したほか心理学の修士号も取得済み。優秀なカレッジ出身投手にみられる洞察力を持っており、トッププロスペクトでなくてもマイナーの階級を上がるたびに投球成績を向上させることができたのも納得だ。

寄稿日:2023-08-23 最終更新日:2023-08-23
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼勝ち星は付かなかったものの自己最多の12奪三振の快投を披露したアボット

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 勝 敗 セ 防御率 イニング 安 責 本 四 死 三振 WHIP K/BB

(~2022年メジャー経験なし)


クリスチャン・エンカーナシオン=ストランド


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Christian Encarnacion-Strand (フルネーム/Christian Lee Encarnacion-Strand)

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1999-12-01生|183cm102kg|一塁手、三塁手 右投右打

出身地/アメリカ合衆国 カリフォルニア州ウォルナットクリーク

ドラフト/2021年MIN4巡目(全体128位)指名

メジャーデビュー/2023-7-17
■選手紹介

メジャー史上最長の17文字のラストネーム(Encarnacion-Strand)を持つパワーヒッター。これまでの最長は15文字のシメオン・ウッズ・リチャードソン(2023年現在メッツ所属)が2010年代にプレーしたジャロッド・サルタラマキア(Saltalamacchia)らの14文字を昨季終盤に更新したばかりだった。また、史上9人目のハイフンを持つメジャーリーガーでもある。

北カリフォルニア出身のエンカーナシオン=ストランドは、地元の高校で州を代表する有望選手として知られ、超強豪のオレゴン州立大学に内定していた。しかし、高校生だった彼は色々な誘惑を断ち切ることができず、学業成績が悪すぎてオレゴン州立大の奨学金が取り消された。ヤバパイ短期大学というジュニアカレッジで再出発を図り、ここでの寮生活はエンカーナシオン=ストランドを大きく成長させた。学業と社交スキルの向上に真剣に取り組み、野球にも好影響を与えるようになった。フレッシュマン(1年生)から所属リーグの年間最優秀選手に選ばれると、リーダーシップを含めた野球人としての評価が急上昇したエンカーナシオン=ストランドのもとにはメジャー球団のスカウトや四年制大学からオファーが殺到。今度は強豪のオクラホマ州立大学(OSU)へ転学するとサードのレギュラーとして全試合に出場、チームトップの打率.336・15本塁打・66打点の猛打でBig12(OSUの所属リーグ)を席巻した。

2021年にミネソタ・ツインズから4巡目指名を受けて入団すると、翌22年のシーズン中にタイラー・マーリーの1対3の交換トレードの1人としてシンシナティ・レッズへ移籍。同年はマイナー3階級で打率.304・OPS.955を記録し、打点はマット・マービスに次ぐマイナーリーグ2位タイの114打点の好成績を残した。

開幕をAAAで迎えた2023年には67試合で打率.331・OPS1.042・20本塁打と階級を上げても猛打を続け、7月にメジャーにコールアップされた。スタメン出場したデビュー戦は降雨に悩まされ試合はサスペンデッドとなるが、8月にサヨナラHRを放つなど随所に長打力を発揮しており若手レッズ打線の中軸に据えられている。

プレイヤーとしては30本塁打が可能なポテンシャルがあるとされるパワーが魅力で、センター方向へヒットを打つ技術も持ち合わせている。一方で早打ち傾向がある割に三振が多いところが打撃の改善点である。サードとファーストで出場している守備力は、ジュニアカレッジ時代にゴールドグラブを受賞しているとはいえメジャーでは評価が分かれており、また平均以上のスピードもポジション的に守備に生かされていない。

寄稿日:2023-08-22 最終更新日:2023-08-22
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼ルーキーながらサヨナラ4号HRを放ったエンカーナシオン=ストランド

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 打席 安打 2B 3B 本 打点 四 死 三振 盗 打率 出塁 長打

(~2022年メジャー経験なし)


グラハム・アッシュクラフト


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Graham Ashcraft (フルネーム/Douglas Graham Ashcraft)

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1998-02-11生|188cm109kg|先発 右投左打

出身地/アメリカ合衆国 アラバマ州ハンツビル

ドラフト/2019年CIN6巡目(全体174位)指名

メジャーデビュー/メジャー経験なし
■選手紹介

90マイル後半のカッターがメイン球種のカットボーラー。2022年にメジャーデビューを果たしてからレッズの先発陣の一角を担っている。

【球歴】
アッシュクラフトはアラバマ州の高校で投打ともに将来性のある投手として注目されていた。2016年のドラフトで高校生指名候補者100人に選ばれ、3~4巡目相当と予想されていた。アッシュクラフトはスカウトに対してミシシッピ州立大学(MSU)へのコミットメントを尊重することを伝え、ダメもとで12巡目指名したロサンゼルス・ドジャースの指名を拒否して予定通りMSUに進学した。

フレッシュマン(1年生)のときに右臀部に痛みを感じながら5先発を含む10試合に出場したが見る見るうちに状態は悪化。専門医に診てもらうと右大腿骨に5cm余分な骨が成長しており、股関節の軟骨と靱帯に損傷を与えていることが判明し、2度の手術のより年単位での欠場を強いられた。その後出場機会を求めアラバマ大学バーミンガム校に転校し、公式戦で99マイルに達するファストボールを投げて寛解をアピールした。

2019年にドラフト6巡目でシンシナティ・レッズから指名され、同年ルーキーリーグからキャリアをスタートさせた。新型コロナによるシーズン中断後、進化を遂げたアッシュクラフトは2021年に初昇格のダブルAで好成績を残し、続く22年にもトリプルAでも好投したためレッズから先発ローテーション候補としてコールアップされた。途中、腰や右上腕二頭筋のケガで離脱したもののチーム2位となる19先発・105イニングを消化し、100敗を喫したレッズ投手陣のなかハンター・グリーン、ニック・ロドロとともにルーキーとしては充分な働きを見せた。

【投球内容】
投球全体の過半数をカットボールが占め、残りはスライダーとシンカーを投じる。ストロングポイントはカットボールの球速が95~97.5マイルをコンスタントに計時するところ。カットボーラーの先発の中ではトップクラスの球速・回転数を誇っているがシンカーは被打率が高く、段々とカットボールとスライダーの2球種のみで勝負しにいく場面が増えている。加えて球持ちが非常に悪い投球フォームの影響で空振りを奪う能力に欠ける。

マイナー時代から指摘されてきたコマンドの向上と、カットボールとスライダー以外の球種が今後の課題となっている。シンカーが思うように操れないのなら大学時代によく投げていたチェンジアップの再チャレンジが必要かもしれない。

寄稿日:2023-08-22 最終更新日:2023-08-22
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 勝 敗 セ 防御率 イニング 安 責 本 四 死 三振 WHIP K/BB

2022 CIN 19 5 6 0  4.89 105.0 119 57 11 30 8 71 1.42 2.37


タイロ・エストラーダ


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Thairo Estrada (フルネーム/Thairo Jose Estrada)

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1996-02-22生|178cm84kg|二塁手、遊撃手、三塁手 右投右打

出身地/ベネズエラ カラボボ州ベフマ

プロ入り/2012年8月NYY契約

メジャーデビュー/2019-4-21
■選手紹介

元ヤンキースの有望株だったショートが本職のユーティリティ。デレク・ジーターを尊敬し、219年にヤンキースでメジャーデビューを果たした。2021年にジャイアンツに来てからいい働きをしている。メジャーデビューする前に強盗に銃撃されたことがある。

エストラーダはベネズエタのカラボボ州の田舎町ベフマで生まれた。本人曰く、珍しい名前のThairoは父と叔父の名前がJairoで、それにアメリカ風の響きを持たせるために"T"を付け足したとのこと。奇しくも2021年からチームメイトとなったウィルマー・フローレスの実家が近所にあり、2022年のオフシーズンにはフローレスと母国で自主トレを行っている。

2012年8月に国際フリーエージェントとしてニューヨーク・ヤンキースと49,000ドルで契約。2018年にメジャー40人枠に登録されメジャーデビュー目前だったが、1月に故郷のレストランで食事中に強盗に遭遇。犯人の10代の若者2人は射殺されたが、エストラーダは右太腿周辺に銃弾を受けた。ベネズエラでは手術不可能だったため弾を取り除くのを7月まで待たねばならず、シーズンの大半を故障者リスト入りした状態で過ごした。

翌19年にようやくメジャーデビュー。2021年の開幕直後にサンフランシスコ・ジャイアンツへ金銭トレードで移籍。出番の少なかったヤンキースとは違い、好守で堅実な働きを見せユーティリティの座を掴んだ。受賞はならなかったが22年には新設されたシルバー・スラッガー賞のユーティリティ部門にノミネートされた。

【プレイスタイル】
エストラーダはキャリアを通してストライクゾーンをコントロールし、優れたラインドライブを放ってきた。ただバッティング面での長所はそれほどなく、あまり四球を稼がない。また走力はメジャーでもかなり速いが、盗塁の適性があまり見られない。

汎用性の高い守備力はエストラーダの最大の長所である。ショートに必要な瞬発力、ハンドリング、肩の強さだけでなく、内外野のほかのポジションを守る能力も兼ね備えている。

寄稿日:2023-08-10 最終更新日:2023-08-10
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 打席 安打 2B 3B 本 打点 四 死 三振 盗 打率 出塁 長打

2019 NYY 35  64  16  3 0  3 12  3 1 15  4 .250 .294 .438

2020 NYY 26  48  8  0 0  1  3  1 3 19  1 .167 .231 .229

2021 SF  52 121  33  4 0  7 22  9 2 23  1 .273 .333 .479


ラモンテ・ウェイドJr.


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LaMonte Wade (フルネーム/LaMonte Aaron Wade)

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1994-01-01生|185cm93kg|外野手、一塁手 左投左打

出身地/アメリカ合衆国 メリーランド州ボルチモア

ドラフト/2015年MIN9巡目(全体260位)指名

メジャーデビュー/2019-6-28
■選手紹介

ジャイアンツに来て戦力となった外野手。ツインズのマイナーにいた頃はあまり目立っていなかったが、ジャイアンツに来てから9回以降の勝負所で打ちまくり、移籍1年目にしてサンフランシスコのファンの心を掴んだ。ニックネームはその終盤の勝負強さから"レイトナイト・ラモンテ"もしくは"レイトイニング・ラモンテ"。

【球歴】
メリーランド州ボルティモアで生まれたウェイドJr.は、地元の高校に通い野球とバスケットボールをプレー。野球では外野手兼投手を務め、2012年のメリーランド州でNo.1の有望選手にランクされた。高校卒業後はメリーランド大学カレッジパーク校に進んでメリーランド・テラピンズでプレー。フレッシュマン(1年生)のときに数試合登板してからは野手に専念し、同期のホゼ・クアスや1個下のブランドン・ラウとテラピンズの主軸を担った。

2015年にドラフト9巡目指名を受けてミネソタ・ツインズに入団。マイナー時代はどちらかというと選球眼が良い外野手という評価をされていた。大きな注目を集めることはなかったが、昇格2年目の階級で必ず成績を伸ばし、2019年にメジャー昇格を果たした。

ツインズで目立った活躍ができぬ間にトレードが成立。投手のショーン・アンダーソンとのトレードで2021年からサンフランシスコ・ジャイアンツ入りした。すると2021年は9回限定ではOPS1.409、延長戦時OPS1.200と終盤に限って打ちまくり、予想外の107勝を挙げるチームの象徴的存在となった。

翌年は打撃不振に陥ったものの、2023年は立ち直り21年に匹敵する活躍を見せている。現地6/2にオラクル・パークで通算100本目のメモリアルなスプラッシュヒットを放ち、同年のハート&ハッスル賞の候補者に選ばれた。

【プレースタイル】
試合終盤に強い特徴は前述の通りだが、もう一つ特徴的なのは左投手を極端に苦手としている点だ。初めてヒットを放ったのはメジャー3年目(2021年)の後半戦まで出ず、21年は打率.135・OPS.389、22年は打率.100・OPS.252と壊滅的だった。23年は月末現在で出塁率・長打率ともに3割台に乗せており、克服できれば不動のレギュラーになれるだろう。

守備は両翼をメインにセンターも守れる外野手だが、肩が弱く守備指標も良くない。ファーストでの出場機会が増えてきており、2023年はブランドン・ベルトがFA流出したこともあってファーストのレギュラーに納まっている。

寄稿日:2023-08-10 最終更新日:2023-08-10
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼100本目となるメモリアル・スプラッシュヒットを放つラモンテ・ウェイドJr.

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 打席 安打 2B 3B 本 打点 四 死 三振 盗 打率 出塁 長打

2019 MIN 26  56  11  2 1  2  5 11 2  9  0 .196 .348 .375

2020 MIN 16  39  9  3 0  0  1  4 1  9  1 .231 .318 .308

2021 SF 109 336  85 17 3 18 56 33 5 89  6 .253 .326 .482


コリン・レイ


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Colin Rea (フルネーム/Colin D. Rea)

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1990-07-01生|196cm107kg|先発 右投右打

出身地/アメリカ合衆国 アイオワ州カスケード

ドラフト/2011年SD12巡目(全体383位)指名

メジャーデビュー/2015-8-11
■選手紹介

2021年と22年にソフトバンクホークスに所属した先発投手。"Rea"と綴って"レイ"と発音する。同じ球団に出戻ってプレーするのを何回か繰り返している。

2011年に12巡目指名でサンディエゴ・パドレスから指名を受けてプロ入りしたレイは、15年にメジャーデビュー。先発ローテーションに食い込み、メジャーに定着しつつあったが、翌16年のレギュラーシーズン中にマイアミ・マーリンズに一度トレードされた。

マーリンズ移籍後最初の試合で右ヒジを壊し、トミー・ジョン手術が必要な重症を負った。トレードの際、パドレスがメディカルレポートにレイのヒジの状態を意図的に書かなかったとしてマーリンズ側が抗議。結果、トレードは無効となり、この1試合に登板しただけでパドレスに送り返された。同年シーズンオフにトミー・ジョン手術を受けた後DFAとなったレイが、新天地のシカゴ・カブスでメジャー復帰するまでに4年の歳月を費やした。

2021年にはソフトバンクと契約を結んだが、コロナ禍で開幕から2か月遅れて合流した。そのうえ、東京五輪期間にアメリカに一時帰国したが、さなかに夫人が早産のため来日が難しくなり、6試合の先発実績を残して退団することになった。翌22年には再度ソフトバンクと1年契約を結び、23試合の先発登板で5勝6敗・防御率3.96を記録した。

2度目のソフトバンク退団の後、2023年からはブリュワーズとマイナー契約。ブリュワーズは最初のソフトバンク退団後にメジャー復帰を果たした球団で、別のチームを経て出戻るのはパドレス、SBホークスに次ぐ3球団目となった。開幕時はマイナーで迎えたものの程無くしてメジャー26人枠を勝ち取り先発ローテの一角に食い込んだ。23年シーズンの初めての登板では、ソフトバンク時代に同僚だったニック・マルティネスと投げ合っている。

球種は多彩。3種類のファストボール(カッター、ツーシーム、フォーシーム)を6割程度使い、スライダー、カーブ、スプリットを満遍なく織り交ぜるピッチングをする。スライダーは22年にドライブラインで新たに取得したスイーパータイプのもの。ただ、今のところ変化量は平均以下で通用しているとは言い難く、ほかの球種もスプリット以外は空振りが取れず痛打されている。

寄稿日:2023-04-30 最終更新日:2023-04-30
オールスター:なし

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 勝 敗 セ 防御率 イニング 安 責 本 四 死 三振 WHIP K/BB

2015 SD  6 2 2 0  4.26 31.2 29 15  2 11 1 26 1.26 2.36

2016 SD  19 5 5 0  4.98 99.1 101 55 12 44 8 76 1.46 1.73

2016 MIA  1 0 0 0  0.00  3.1  1  0  0  0 0  4 0.30  ∞

2020 CHC  9 1 1 0  5.79 14.0 15  9  3  2 0 10 1.21 5.00

2021 MIL  1 0 0 0  7.50  6.0  7  5  2  0 0  5 1.17  ∞


デビン・ウィリアムズ


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Devin Williams (フルネーム/Devin Terran Williams)

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1994-09-21生|188cm91kg|リリーフ 右投右打

出身地/アメリカ合衆国 ミズーリ州セントルイス

ドラフト/2013年MIL2巡目(全体54位)指名

メジャーデビュー/2019-8-7
■選手紹介

2023年のWBCアメリカ代表で日本戦にも登板したリリーフ右腕。空気を切り裂く様を表した"エア・ベンダー"と呼ばれるチェンジアップの使い手で知られている。ウィリアムズのチェンジアップはサークルチェンジの握りで強烈なシュート回転をかけ、スクリューボールのような独特の軌道を描く、分かっていても打てないマネーピッチである。2021年にはチームが地区優勝した夜、興奮しすぎて利き手で壁を殴り骨折してしまいポストシーズンを棒に振ったお茶目な(?)一面も持っている。

【球歴】
アメリカ・ミズーリ州で生まれ育ったウィリアムズは、高校時代から高いスポーツの才能を見せ、2013年のドラフトで高校生ながら2巡目(全体54位)で指名された。マックス・シャーザーらを輩出した超強豪ミズーリ大学に進学予定だったが、オーバースロットとなる契約金135万ドルでブリュワーズに入団した。

マイナーでは先発投手として投げていたが、2017年に右ヒジの尺側側副靱帯の断裂でトミー・ジョン手術を受けた。リリーバーに転向して復帰した2019年にトリプルAでの好投をそのままにメジャーデビューを果たし、翌20年に突如ブレイク。短縮シーズンではあったが22試合に登板して防御率0.33・K/9=17.7の驚異的な数字を残してナ・リーグ新人王を獲得。サイ・ヤング賞やMVPの選定では得票もあった。

翌年以降もセットアップマンとして申し分ない成績を残しているが、2022年途中に左腕クローザーのジョシュ・ヘイダーが放出されたため、以降クローザーを担っている。23年のWBCではアメリカ代表に選抜。いまやメジャーを代表するリリーバーとしての地位を築いた。

ファストボールは4シームを投げている。デビュー時は95~97マイル出ていたが年々球速が低下。2022年は93.9マイルに留まっているが、球持ちが良いのとエア・ベンダーの割合を増やして打ち取っている。たまにしか使っていなかったスライダーを封印しカットボールを持ち球に加えたがスライダー以上にほぼ使わない。観戦中に見られたら相当レアである。

【その他】
野球よりサッカー好き疑惑があるメジャーリーガーの1人。高校時代は類まれな運動能力でサッカーとバスケットボールもやっていたが、特にサッカーに熱を入れていた。2018年のトミー・ジョン手術のリハビリをやっていた時期には、大学に入りなおしてサッカーをやろうと考えていたこともあった。

寄稿日:2023-04-30 最終更新日:2023-04-30
オールスター:1回(22)

主な表彰:ALL-MLB 2nd1回(20), 新人王1回(20), 最優秀救援投手1回(20),

タイトル:なし

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 勝 敗 セ 防御率 イニング 安 責 本 四 死 三振 WHIP K/BB

2019 MIL 13 0 0 0  3.95 13.2 18  6  2  6 2 14 1.76 2.33

2020 MIL 22 4 1 0  0.33 27.0  8  1  1  9 1 53 0.63 5.89

2021 MIL 58 8 2 3  2.50 54.0 36 15  5 28 2 87 1.19 3.11


クリスチャン・イエリッチ


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Christian Yelich (フルネーム/Christian Stephen Yelich)

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1991-12-05生|191cm88kg|左翼手 右投左打

出身地/アメリカ合衆国 カリフォルニア州サウザンドオークス

ドラフト/2010年FLO1巡目(全体23位)指名

メジャーデビュー/2013-7-23
■選手紹介

急に成績を落としてファンを困惑させている元ナ・リーグMVP。大ブレイク以前から背中や腰の痛みで故障離脱を繰り返していて、スイング時に強く踏み込めなくなったことが影響している。ただその急落っぷりは禁止薬物やサイン盗みを疑われることがあるほどで、過去にビジターでの打撃成績が極端に悪かったり、ダルビッシュ有からは打席中の視線を怪しまれてゴミ箱疑惑をかけられたりした。なお、5chでは家富豪の愛称で呼ばれることがある。

ロサンゼルスに近いサウザンドオークスで生まれたイエリッチは高校時代にオールアメリカの2ndチームに選ばれるほどの逸材だった。2010年に高校生ながらドラフト1巡目(全体23位)指名を受け、フロリダ・マーリンズに入団した。

チームがマイアミ・マーリンズに名前を変えた翌2013年、21歳の若さでメジャーデビューを果たすと、14年はレフトの定位置を確保しフルシーズンをメジャーで過ごした。マーリンズでは高い打率と出塁率が期待できる中距離打者のイメージだったが、2018年にブリュワーズに移籍すると突如スラッガーに変身。同年には打率.326・36本・110打点・OPS1.000・rWAR7.3を記録してMVPを受賞。翌19年も打率.329・44本・OPS1.100とさらに長打を増やし、rWAR7.0でMVP得票2位となった。

2年連続の大活躍にブリュワーズは2020年開幕前、原契約に延長する形で9年2億1500万ドルの大型契約を結んだ。しかし、コロナ禍の短縮シーズンとなった2020年は打率.205と不振を極め、21年は117試合でわずか9本塁打と急激にパワーが低下した。2023年現在もかつての打力が戻る気配がなく不良債権となりつつある。

2017年にWBCのアメリカ代表だったイエリッチが3年後、再びWBCの代表メンバーに選ばれるぐらいの打棒復活を期待したい。なお、イエリッチは母方の祖父が日本人である日系選手だが恐らくWBCの出場資格は無いはずで、イエリッチを日本代表に…的なニュース記事があったら気を付けてもらいたい。

寄稿日:2023-04-30 最終更新日:2023-04-30
オールスター:2回(18,19)

主な表彰:ALL-MLB 1st1回(19), MVP1回(18), ゴールドグラブ賞1回(14), シルバースラッガー賞3回(16,18,19), ハンク・アーロン賞2回(18,19),

タイトル:首位打者2回(18,19),

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 打席 安打 2B 3B 本 打点 四 死 三振 盗 打率 出塁 長打

2013 MIA 62 240  69 12 1  4 16 31 1 66 10 .288 .370 .396

2014 MIA 144 582 165 30 6  9 54 70 3 137 21 .284 .362 .402

2015 MIA 126 476 143 30 2  7 44 47 2 101 16 .300 .366 .416

2016 MIA 155 578 172 38 3 21 98 72 4 138  9 .298 .376 .483

2017 MIA 156 602 170 36 2 18 81 80 6 137 16 .282 .369 .439

2018 MIL 147 574 187 34 7 36 110 68 7 135 22 .326 .402 .598

2019 MIL 130 489 161 29 3 44 97 80 8 118 30 .329 .429 .671

2020 MIL 58 200  41  7 1 12 22 46 1 76  4 .205 .356 .430

2021 MIL 117 399  99 19 2  9 51 70 3 113  9 .248 .362 .373


ウェイド・マイリー


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Wade Miley (フルネーム/Wade Allen Miley)

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1986-11-13生|188cm100kg|先発 左投左打

出身地/アメリカ合衆国 ルイジアナ州ハモンド

ドラフト/2008年ARI1巡目追補(全体43位)指名

メジャーデビュー/2011-8-20
■選手紹介

サービスタイムが11年を超えるベテラン先発左腕(2023年開幕時点)。デビューしてから途中何年間か打ち込まれる年が続いたが、ずっと先発で投げ続けている。23年からは5年ぶりにミルウォーキー・ブリュワーズで投げることになった。

アメリカ・ルイジアナ州に生まれブレーブスファンとして育ったマイリーは、2008年のドラフトで1巡目追加補完(全体43位)でアリゾナ・ダイヤモンドバックスに入団。2011年にメジャーデビューすると、翌年は開幕ローテを掴んでオールスターに選出されるなどシーズンを通して活躍。16勝11敗・防御率3.33の素晴らしい実績を残した。新人王にふさわしい成績ではあったが、同年はブライス・ハーパーのデビューイヤーであり、ナ・リーグ新人王争いは僅差でハーパーに敗れ2位にとどまった。(5位には青木宣親がランクインした。)

Dバックスに欠かせない主力投手となったマイリーだったが、投球内容はジリ貧になっていく。ブレイクした2012年から5年連続で防御率が悪化し、投球イニング数も徐々に減らしていった。15年に所属したレッドソックスでは前半に打たれまくった印象が強く、降板を促されて監督と衝突したり、ファンからのブーイングがひときわ大きく苦しむキャリアを象徴していたシーズンだった。

しかし、2018年にマイナー契約で入団したブリュワーズでは配球を見直したことが功を奏した。シーズンの半分程度の稼働だったが16試合に先発して防御率2.57を残した。翌19年にはデータ活用に長けるアストロズに加入すると、球団主導でカットボールを軸にしたスタイルへと変貌を遂げ、3年ぶりに規定投球回をクリアし14勝6敗と完全復活。レッズに移籍したあとの2021年には、自身初のノーヒッターや週間MVPを受賞するなど一線級の先発投手の地位を固めていった。

2023年現在の投球スタイルは130km/h台後半のカットボールを主体に、140km/h前半のフォーシーム、スライダー、チェンジアップ、カーブを投じる。最近はマシになったが対右打者に分が悪い。また、牽制がうまいため23年から適用の新ルールへの影響が少ないのは優れた点だ。

寄稿日:2023-04-29 最終更新日:2023-04-29
オールスター:1回(12)

主な表彰:なし

タイトル:なし

▼レギュラーシーズン個人成績

年  チーム 試 勝 敗 セ 防御率 イニング 安 責 本 四 死 三振 WHIP K/BB

2011 ARI  8 4 2 0  4.50 40.0 48 20  6 18 0 25 1.65 1.39

2012 ARI 32 16 11 0  3.33 194.2 193 72 14 37 2 144 1.18 3.89

2013 ARI 33 10 10 0  3.55 202.2 201 80 21 66 4 147 1.32 2.23

2014 ARI 33 8 12 0  4.34 201.1 207 97 23 75 4 183 1.40 2.44

2015 BOS 32 11 11 0  4.46 193.2 201 96 17 64 4 147 1.37 2.30

2016 SEA 19 7 8 0  4.98 112.0 117 62 18 34 3 82 1.35 2.41

2016 BAL 11 2 5 0  6.17 54.0 70 37  7 15 3 55 1.57 3.67

2017 BAL 32 8 15 0  5.61 157.1 179 98 25 93 4 142 1.73 1.53

2018 MIL 16 5 2 0  2.57 80.2 71 23  3 27 5 50 1.21 1.85

2019 HOU 33 14 6 0  3.98 167.1 164 74 23 61 5 140 1.34 2.30

2020 CIN  6 0 3 0  5.65 14.1 15  9  1  9 2 12 1.67 1.33

2021 CIN 28 12 7 0  3.37 163.0 166 61 17 50 3 125 1.33 2.50