WBC2023(11)メキシコ代表 選手名鑑


 グループリーグではアメリカを、準々決勝ではプエルトリコを倒してWBC初のベスト4に進出が決まったメキシコ代表。前評判では警戒が薄かったが、呼びたいメジャーリーガーはほとんど全員招集できたこと、フリオ・ウリアスがメジャーを代表する投手に成長したことなどプラス要素が大きく強豪チームが出来上がった。

▼目次 – メキシコ代表選手一覧
【1.投手】
【2.捕手】
【3.内野手】
【4.外野手】
【5.監督・コーチ】
【6.参加できなかった有力選手】

【投手】
7 フリオ・ウリアス(ロサンゼルス・ドジャース)
 フェルナンド・バエンズエラの再来と期待されてきた先発左腕。2021年に最多勝、22年に防御率2.16を記録しサイヤング賞得票3位を記録する大活躍。ドジャースではクレイトン・カーショウの衰えとウォーカー・ビューラーのTJ手術で今季ウリアスにかかる重圧は大きい。
14 ジョジョ・ロメロ (セントルイス・カージナルス)
 2種類の速球やスライダー、チェンジアップなど多くの変化球を使いこなす中堅サウスポー。メキシコ系アメリカ人。2020年のデビューから2年続けて防御率7点台だったが、昨季は4.96と改善させた。変化球以上に趣味が多彩。
16 サミュエル・ザズエタ(ティフアナ/メキシカンリーグ)
 メキシカンリーグひと筋のコントロールの良いリリーフ右腕。17歳の時にドミニカン・サマーリーグに参加して好成績を挙げるも渡米せず、その後は夏・冬両方のメキシカンリーグで投げ続けている。
23 エルビエル・アルメンタ(フィリーズ傘下A+)
 2000年生まれの若いリリーフ左腕。フィリーズのマイナー下位に所属している。荒れ球系で奪三振と与四球を量産する。
33 ヘラルド・レイエス(エンゼルス傘下AAA)
 サイドスローから90マイル後半のファストボールを投げるリリーバー。ファストボールが中心でたまにスライダーを投げる。
 メキシコで生まれ、学生時代は国境に接するテキサス州の高校と大学に進学した。プロ入り後、2019年にDバックスでメジャーデビュー。エンゼルス傘下に移籍後の2021年にトミー・ジョン手術を受け、昨季終盤にメジャー返り咲きを果たした。
43 パトリック・サンドバール(ロサンゼルス・エンゼルス)
 大谷の同僚として日本でも有名なサウスポー。昨季はチェンジアップとスライダーに磨きがかかり好成績を挙げた。プールCの先日のアメリカ戦で先発登板、勝利投手に。
46 セサール・バルガス(モンテレイ/メキシカンリーグ)
 BCリーグ茨城からオリックス・バファローズに入団するも昨オフ契約を見送られた。
48 ジェイク・サンチェス(パドレス傘下AAA)
 メジャー経験のない33歳のベテランリリーバー。カリフォルニアで生まれメキシコとの二重国籍を持つ。大学でドラフトに掛からず独立リーグ歴が長いが、今年2月にパドレス傘下のAAAと契約。久々のマイナー球団入りとなった。
49 ヘスス・クルーズ(フィリーズ傘下AAA)
 2020年にメジャー初登板のリリーフ右腕。昨季2年振りにメジャー昇格も結果を残せず。毎年ウィンターリーグに積極的に参加している。
50 マニー・バレダ(ティフアナ/メキシカンリーグ)
 2021年に32歳にしてメジャーデビューを果たしたベテランスターター。アリゾナ州出身。メキシカンリーグ歴が長い。
55 エイドリアン・マルティネス(オークランド・アスレチックス)
 昨季アスレチックスでメジャーデビューの先発右腕。所属チームがファイヤーセール実施後の焼け野原だったため先発登板のチャンスをもらっていたが防御率は6点台と振るわず、一発病に苦しんだ。
59 ホゼ・ウッキーディ(ヒューストン・アストロズ)
 昨季規定投球回数以上を投げ13勝を挙げたアストロズの先発右腕。圧倒するような投球ではないがどの球種も制球が良く、毎回きっちり試合を作ってくれる。
 昨季のトレード期限間際、前GMがウッキーディをトレードに出そうとしてオーナーに拒否された事件?があった。
65 ジオバニー・ガイエゴス (セントルイス・カージナルス)
 中継ぎで実績を積みクローザーに登りつめたリリーバー。
77 ハビエア・アサッド(シカゴ・カブス)
 昨季メジャー初昇格してまぁまぁな成績を残した先発右腕。メジャーでは空振りが奪えず歩かせてしまうケースが目立った。
85 ルイス・セサ(シンシナティ・レッズ)
 ヤンキースの元プロスペクトで現在はレッズのリリーバーをやっている。
99 タイワン・ウォーカー(フィラデルフィア・フィリーズ)
 良いピッチャーだがたまに尋常じゃなく打ち込まれるクセがある先発右腕。スプリッターが強力なマネーピッチ。所属チームでも99番を好んでつけている。
【捕手】
15 オースティン・バーンズ(ロサンゼルス・ドジャース)
 フレーミングに定評のあるアメリカ人キャッチャー。母親がメキシコ人のため代表入り資格があった。所属するドジャースではウィル・スミスに正捕手争いで敗れたが。他球団なら正捕手の実力がある。またセカンドで出場することもある、最近のユーティリティキャッチャーの走りのような選手でもある。
51 アレクシス・ウィルソン(キンタナロー/メキシカンリーグ)
 出場辞退のアレハンドロ・カークの代わりに入ったメキシカンリーガー。メジャー経験は無く2019年までカージナルス傘下のマイナー下位でプレーしていた。
【内野手】
3 ルイス・ウリアス(ミルウォーキー・ブリュワーズ)
 選球眼が良く内野ならどこでも平均以上に守れる技術屋。ホームランもそこそこ打て、直近2年で39本放っている。
 兄のラモン・ウリアスも似たような渋い選手で昨季サードのゴールドグラブを受賞。兄弟でともにrWAR3.0以上をたたき出した。
11 ラウディ・テレス(ミルウォーキー・ブリュワーズ)
 120kg超の体格の通りのパワーヒッター。昨季は初めて故障や降格することなくメジャーに帯同、35本塁打を放った。守備は一塁手専任だができれば指名打者に入れたい。
13 アラン・トレホ(コロラド・ロッキーズ)
 二遊間を守るロッキーズの若手内野手。メジャー2年目の昨季はルーキーイヤーより出番を増やし打撃成績をアップさせた。早打ちなのに三振が多いのは今後の課題。ロサンゼルス生まれ。
17 イサック・パレイデス(タンパベイ・レイズ)
 レイズに移籍してすぐにブレイクした若手内野手。出塁率の高さを評価されていたが昨季111試合で20本・fWAR2.5の活躍。主にセカンドとサードの守備も平均以上。
32 ジョーイ・メネセス(ワシントン・ナショナルズ)
 30歳にして才能が開花した遅咲きの内野手。2019年にオリックス・バファローズに在籍していたがドーピングが発覚し退団となった。
38 ロベルト・バエンズエラ(モンテレイ/メキシカンリーグ)
 メキシカンリーグひと筋の小柄な内野手。ショートを中心にサード、セカンドを守る。3割に迫る通算打率を誇り、昨季は夏・冬両方とも3割を超え、特にウィンターリーグの打率はリーグ1位だった。
62 ジョナサン・アランダ(タンパベイ・レイズ)
 昨季メジャーデビューした24歳の若手内野手。メジャーでは壁にぶち当たったがAAAでは打率.318・OPS.915の好成績をマークしている。セカンドとファースト、サードで出場可能。
【外野手】
2 ジャレン・デュラン(ボストン・レッドソックス)
 第2のムーキー・ベッツになってもらいたいレッドソックスの中堅手。スピードの評価は依然高いものの、バッティングは2年続けてメジャーに適応できなかった。
 東京オリンピックでは予選でアメリカ代表の試合に出場。いずれメキシコ代表として出たいと言っていたため希望が叶う形に。
5 アレック・トーマス(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)
 昨季メジャーでプレーした、かなり期待値が高かったトッププロスペクト。5ツールプレイヤーとして期待され、特にスピードとセンターの守備の評価が高い。昨季打撃は振るわなかったが守備面で実力を発揮、rWAR1.4を記録した。伸びシロが大いにある今季のブレイク候補。
24 ホゼ・カルドナ(モンテレイ/メキシカンリーグ)
 脚力とセンターの守備がウリの俊足外野手。テキサス・レンジャースのAAAでプレーしたことはあるがメジャー昇格はならず、コロナ以降はメキシカンリーグでプレーしている。打撃はシュアだがパワーレス。
27 アレックス・ベルデューゴ(ボストン・レッドソックス)
 2017年に引き続きメキシコ代表に選ばれた外野手。ドジャースの有望株で国際試合によく出ていたが、ムーキー・ベッツや前田健太が絡んだ三角トレードに巻き込まれてレッドソックスにトレードされた。
 守備ではセンターも可能だが両翼向きでレッドソックスではレフトが定位置。21年オフ、大谷の活躍に触発されて23年から二刀流選手になる目標をぶち上げたが、その後どうなったかは不明。
56 ランディ・アロザレナ(タンパベイ・レイズ)
 メキシコ代表と聞くと違和感があるキューバ出身外野手。亡命後にメキシコにわたり国籍を取得したため出場資格があった。2020年後半に彗星のごとく現れポストシーズンの本塁打記録を樹立、翌21年にア・リーグ新人王を獲得した。彼のサクセスストーリーを描いた映画造られることになった。
【監督・主なコーチ】
監督 ベンジー・ギル(エンゼルス 一塁ベースコーチ)
 東京オリンピックから引き続きメキシコ代表監督を務める元メジャーリーガー。1990年代後半~20年代前半にレンジャースとエンゼルスで二遊間を守った。WBCには選手として選ばれた第1回大会以来の参戦となる。
 息子のマテオ・ギルは現役マイナーリーガー。18年のドラフト3巡目でカージナルス入りした後ノーラン・アレナドの交換要員としてトレードされている。
ベンチコーチ ビニー・カスティーヤ
 主にロッキーズの主軸を担い活躍した元球宴三塁手。通算320本塁打のメキシコ出身選手最多記録を持ち、メキシコではフェルナンド・バエンズエラに次ぐ英雄的な存在。WBCには2006年に選手として、09年は監督として参加している。
投手コーチ エルマー・デセンス(レッズ傘下Rk投手コーチ)
 かつて読売ジャイアンツに1年在籍した元先発右腕。1999年に来日。巨人では未勝利に終わったが、翌年メジャーに復帰すると先発ローテ入りを果たし、3年連続で規定投球回数を達成するワークホースに成長。メジャー最終登板は39歳の時。ここまで息の長い選手になるとは誰も予想できなかった。
 引退後はレッズ傘下のマイナーの投手コーチ歴が長い。
ブルペンコーチ ホレイショー・ラミレス
 2006年のWBC代表で、アトランタ・ブレーブスなどでプレーした元先発左腕。2003年にメジャーデビュー、裏ローテに入って2度2ケタ勝利を記録した実績を持つ。43歳だがまだ現役を続けており、今冬のメキシカンリーグで登板している。
【参加できなかった有力選手】
アレハンドロ・カーク(トロント・ブルージェイズ)
 ブルージェイズの人気者。昨年のオールスターでは多くの票を集めた。WBCに参加する意思を持っていたがパートナーの出産のため春季キャンプを離れ、WBC代表も辞退した。

by【MLB名鑑.com専属コラムニスト】デッドボーラー