WBC2026 オランダ代表予想 選手名鑑


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最終更新日:2025/6/15

【寸評】「ホーフトクラッセ」という自国リーグを持ち、長年にわたって欧州野球を牽引してきたオランダだが、今大会は明らかに過渡期。次回WBCだけでなく、厳しい戦いが当面続きそうだ。

 オランダ代表は「投手=本土系」「野手=カリブ系」という役割分担が長年の伝統となってきたが、近年はどちらも人材不足になりつつある。特にショートは、かつてはアンドレルトン・シモンズ、ディディ・グレゴリアス、ザンダー・ボガーツ、ジュリクソン・プロファーらが次々と出てきた“ショート大国”だったが、現在はむしろ人材難。攻守ともに世代交代の波に直面しており、チーム力の再構築が急務となっている。

 さらに、先発投手希望の星だったセム・ロバースが今春TJ手術を受け、次回WBCは絶望的となった。

 そんな中、MLB通算434本塁打のアンドリュー・ジョーンズが監督に就任。本土出身選手とアルバ・キュラソーなどカリブ組との融合が難しいとされるが、起用法やチーム作りに注目が集まる。

▼目次 – オランダ代表選手一覧
【先発】
【リリーバー】
【捕手】
【内野手/ユーティリティ】
【外野手】
【監督/主なコーチ/GM】
――――――――――――――――――――――――
【参考1:過去の名選手】
【参考2:日本に来た助っ人外国人】


◇先発
ラーズ・ハイヤー
32歳 ※WBC開幕時点 本職:先発 右投右打
1993年9月22日生/出身地:オランダ 北ホラント州ハールレム
WBC2017 WBC2023
 オランダ国内では1・2を争う優秀な先発投手。ファストボールは140km/h台前半、チェンジアップがマネーピッチ。

 元マイナーリーガーで、2010~14年にマリナーズ傘下で投げていた。2015年に帰国して以来ホーフトクラッセで支配的なピッチングを続けており、本土出身者が中心のオランダ投手陣ではエース級の働きを求められる。

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トム・デブロック
29歳 ※WBC開幕時点 本職:先発 右投右打
1996年5月8日生/出身地:オランダ 北ホラント州アムステルフェーン
WBC2017 WBC2023
 WBCで好成績を挙げている元マイナーリーガー。全盛期は過ぎたものの、大柄な体格から140後半~150km/hの速球を投げ込む。マイナーリーグに行く前、楽天イーグルスが育成枠で獲得しようとしたことがあった。

 2020年代に入ってから毎年故障で満足に登板できていなかったが、2023年に完全復活。ホーフトクラッセで2年続けて防御率1点台をマークし、健康なら代表メンバーに欠かせない投手であることをアピールしている。

ジュランジェロ・サインチェ (マリナーズ傘下A+)
22歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 両投両打
2003年5月31日生/出身地:オランダ ハーグ
 マイナーリーガーだが、世にも珍しい両投げピッチャーとして既に有名。オランダ本土で生まれ、キュラソーで育った。

 次回WBCのエース候補のロバースがTJ手術で出場不可能なため、サインチェには主戦投手として責任が重くのしかかる。

アントワン・ケリー (パイレーツ傘下A+)
22歳 ※WBC開幕時点 本職:先発 右投右打
2003年9月1日生/出身地:アルバ オラニェスタット
WBC2023
 アルバ出身の実践向き先発右腕。2021年からピッツバーグ・パイレーツ傘下のマイナーで投げている。プロ入り直後のルーキーリーグでの数試合はコントロールが定まらなかったが、その後は安定して順調に昇級中。

 小柄だが150~155km/h台をコンスタントに投げ、カーブを武器に打ち取る。予想より早いメジャー昇格があるかも?

J.C.スルバラン
36歳 ※WBC開幕時点 本職:先発 右投右打
1989年11月9日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2009 WBC2017 WBC2023
 ホアン・カルロス・スルバランの名前で10年ぐらい前までマイナーにいた。高校生の時にアメリカに野球留学し、ドラフトでプロ入り後はトリプルAまで到達したが、惜しくもメジャーリーガーにはなれなかった。

 2018年から母国オランダリーグに活動の場を移すと毎年活躍し、最優秀防御率や昨季は最多勝のタイトルを獲得した。ただ、カリブのウィンターリーグやメキシカンリーグではよく炎上しており、国際大会で抑えられるかは疑わしい。

シャイロン・マルティス
38歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 右投右打
1987年3月30日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2006 WBC2013 WBC2017 WBC2023
 WBC第1回大会(2006年)の代表メンバーであり、次回選ばれれば5度目の代表入りとなる元メジャーリーガー。2008・09・13年にメジャーで投げ、特に09年は先発ローテーションに入って15試合に登板したが、翌年以降はチャンスに恵まれずメジャー定着はならなかった。

 マイナーをDFAになったあとは独立リーグを経てホーフトクラッセの球団に加入。毎年圧倒的な成績を残し続け、2024年は11勝無敗・防御率1.45をマーク。大ベテランになっても活躍しているが、逆に言えば、いまだにマルティスに頼らなざるを得ないオランダ代表投手陣はつらい。

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カイ・ティマーマンス
30歳 ※WBC開幕時点 本職:先発 右投右打
1995年11月8日生/出身地:オランダ
 ジュニアの頃から代表に選ばれ、16歳からホーフトクラッセで投げている先発投手。しばらくはパッとしない成績だったが、2023~24年は2年続けて防御率1点台をマーク。好成績が認められて、2024年のプレミア12や今春の侍ジャパン強化試合の代表メンバーに選ばれるようになった。

ライアン・ハンティントン
29歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 左投右打
1996年8月25日生/出身地:アルバ オラニェスタット
WBC2023
 右投げ投手に偏りがちなオランダ代表には必須な左腕投手。サイドスローに近い投球フォームで、スライダーとシンカーを上手く織り交ぜる。

ピム・ファイフィンケル
24歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 右投右打
2001年9月7日生/出身地:オランダ ロッテルダム
 わりと最近になって投手に転向した元キャッチャー。基本はサイドスローだが上から投げたり、ピッチングテンポも意識して変化を付けてたりしている。

 球は速くないが、スライダーとチェンジアップを使って内外角を揺さぶるのが得意。

デレク・ウエスト
29歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 右投右打
1996年12月2日生/出身地:アメリカ合衆国 フロリダ州オレンジシティ
WBC2023
 以前はアストロズ傘下の2Aで投げていた元有望株。最速99マイルのファストボールを持っていたが、制球に苦しんでマイナーリーグを終われ、現在はメキシカンリーグに所属している。

 150km/h台をコンスタントに投げられるのはオランダ代表では希少。ただ、大きなケガが多いせいで年齢のわりに経験不足なのが今後のキャリアに不安を残す。トミー・ジョン手術とヒザの故障で2年ブランクがあり、プロ入り前もバスケットボール中のケガのため大学ではジュニア(3年生)になるまで試合に出られなかった。

 先発投手だが、少年時代からヤンキースファンでマリアーノ・リベラがお気に入りだったため、カットボーラーになりたい願望を持っている。フロリダ生まれだが、母方の祖父母がオランダからの移民で、母親も出生地がアメリカだがオランダ国籍を持っていたため、現行WBCのルールではギリギリ代表資格があるパターン。

セム・ロバース (カージナルス傘下AAA)
24歳 ※WBC開幕時点 本職:先発 右投右打
2001年10月12日生/出身地:オランダ ユトレヒト州ゼイスト
 高く期待されているオランダ本土出身の先発投手。ファストボールは速くないがコントロールに優れ、大きめの投球動作から複数の変化球で三振を奪う。

 今季中のメジャー昇格間違いなし!来年はオランダ代表のエースとしても大活躍・・・となるはずだったが、今年5月にトミー・ジョン手術。WBC出場は事実上不可能に。残念すぎる。

Embed from Getty Imagesオープン戦登板前、チームメイトたちに見守られる中で投球練習するロバース

その他の選手 クーン・ポステルマンス、スナイロ・マルティナ

◇リリーバー
ケンリー・ジャンセン (ロサンゼルス・エンゼルス)
38歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投両打
1987年9月30日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
オールスターx4 最優秀救援x2 WBC2009 WBC2013 WBC2017
 威力抜群のカットボールを軸に400セーブ以上を積み上げた大物クローザー。一時期の不振から立ち直ったものの、ここ数年は防御率3点台のシーズンが続いていた。長いこと勤続疲労がささやかれており、エンゼルスに入団した今季は抑えられていない。

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アライ・フランセン (レッズ傘下AA)
24歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ、先発 右投右打
2001年5月20日生/出身地:オランダ デーフェンテル
 シンシナティ・レッズ傘下のマイナーにいる右投げ投手。オランダ代表ではリリーフ登板が多いが、マイナーでは先発とブルペンどちらに適性があるか模索している。

 2025年5月には、野球大好きな祖父がホームゲームの始球式に招かれ、家族で特別な時間を過ごした。

ジェイデン・エスタニスタ (フィリーズ傘下A+)
24歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投右打
2001年10月3日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2023
 キュラソー出身の細身のリリーフ右腕。2019年オフに国際FAでフィリーズと契約、コロナ明けの2021年からルーキーリーグで投げ始めた。球が速く奪三振能力に長けている。階級を上げるごとに順調に結果を残しており、まだシングルA+だが将来メジャー昇格の可能性がある逸材。

 前回WBCの頃は、先発やロングリリーフなどテスト登板のような使われ方をされていたが、現在は完全にリリーフに固定されている。

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マイケル・ビルチェス (ドジャース傘下A)
21歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投右打
2004年6月3日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
 2004年生まれの若きリリーフ右腕。2016年にリトルリーグ・ワールドシリーズにキュラソー代表の一員として、サインチェやアントニアと一緒に出場していた。そのときは調布リトルと対戦し、見事勝利している。

 2021年からドジャース球団のドミニカンサマーリーグで投げ、今季はシングルAで防御率3.10と健闘。4月には3イニングを6奪三振・無失点の「長尺セーブ」を達成し、ドジャースの情報サイト「True Blue LA」に特報された。ぜひ選ばれてほしいピッチャー。

ウェンデル・フローラヌス
30歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投右打
1995年4月16日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2023
 前回WBCメンバーの一人。球速はそこまでなく、アメリカではRookieリーグ止まりだった。日本の新球団くふうハヤテベンチャーズ静岡から獲得オファーがあったが、入団までは至らなかった。

 ちなみに、大谷翔平がアニメ化されたショートムービーの第1話では、2016年の東京ドームでの侍ジャパンvsオランダ戦が題材になっており、大谷のホームランが“天井を突き破る一撃”として盛られて描かれた。実際には天井の隙間に消えていった打球だったが、あの特大アーチを浴びたのが、他でもないフローラヌスだった。

スコット・プリンス (北米独立リーグ)
25歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 右投右打
2001年2月9日生/出身地:オランダ 北ホラント州ハーレマーメール
 国外で積極的に活動している若手右腕。球は速くないが、カーブやチェンジアップの緩急のつけ方がうまい。

 オランダ本土生まれだがテキサス州の高校に通い、2023年にキュラソーのメンバーとしてカリビアンシリーズに参加。昨季は独立リーグのフロンティア・リーグの球団に所属したが、これはオランダ国内で野球への予算が縮小され、給与が減ったため。

ディラン・ファーリー (デルタ州立大学)
24歳 ※WBC開幕時点 本職:先発、リリーフ 左投左打
2001年12月26日生/出身地:オランダ ユトレヒト
WBC2023
 オランダ本土出身のガタイが良いリリーフ左腕。アメリカの短大や大学を転々とし、現在は4校目となるミシシッピ州の大学に在籍している。

 ドジャースのアレックス・ベシアに似た投げ方をする。母親は1996年のアトランタ五輪ソフトボールのオランダ代表選手だった。

アーロン・デフロート
26歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ、先発 右投右打
1999年5月21日生/出身地:オランダ 南ホラント州スヒーダム
 ロッテルダム都市圏内で生まれ育った若手右腕。地元の高校を卒業後アメリカへ渡り、短大を経てアリゾナ州の無名大学に編入して先発投手をしていた。

 新型コロナ前から母国オランダリーグに出場しており、ここ2年は完全にリリーフ転向。クローザーとして好成績を残している。身長は高くないが、縦方向の変化が大きいカーブは結構いい球。

ケビン・ケリー (メキシカンリーグ)
35歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投右打
1990年5月27日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2023
 キュラソー出身のベテランリリーフ右腕。オクラホマ州の短大に留学したがドラフト指名されずオランダに渡り、10年以上活躍している。

エリック・メンデス
26歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投右打
1999年12月3日生/出身地:アルバ クラ・カバイ
WBC2023
 アルバ出身のまだ若いリリーフ右腕。2018年からダイヤモンドバックス傘下で投げていたが、2年連続でシングルAより上に上がれず、ストライクを取るのに苦戦していた。

 投球フォームは一見オーソドックスに見えるが、脚を上げた際に一度キャッチャーミットから目線を切るクセは気になる。

フランクリン・ファンフルプ
30歳 ※WBC開幕時点 本職:リリーフ 右投右打
1995年10月26日生/出身地:シント・マールテン フィリップスブルフ
WBC2023
 新球団のくふうハヤテに在籍した右のサイドハンド投手。異様に曲がるスライダーは一見の価値あり。

その他の選手 ショーンドリック・オデュバー、マイク・ボルセンブルーク、ヨルヘニー・カシミリ、コノル・プリンス、ブランドン・ハーボルド、ハイス・ファンデンブリンク

◇捕手
チャドウィック・トロンプ (ボルティモア・オリオールズ)
30歳 ※WBC開幕時点 本職:捕手 右投右打
1995年3月21日生/出身地:アルバ オラニェスタット
WBC2017 WBC2023
 アルバ出身の強打のキャッチャー。オランダ代表資格のあるキャッチャーでメジャー経験者はトロンプただ一人であり、代表チームのスタメンの座は安泰。

 MLBではブレーブスに在籍していたが、昨季シーズン途中にDFA。その後はオリオールズと契約し、再びメジャー定着を狙っている。

 前回WBCではホームラン後にチーム全員で「ウーッ!」と叫ぶような派手なセレブレーションをしていたが、さすがメジャー経験者のオーラは違うのか、トロンプが一番目立っていた。

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ヘンドリック・クレメンティナ
28歳 ※WBC開幕時点 本職:捕手 右投右打
1997年6月17日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
 2023年までマイナーでプレーしていた打撃型捕手。最高で3Aまで昇格したが、同年オフにリリースされた。

 2024年はベネズエラのサマーリーグでホームランを量産し、メキシカンリーグへの移籍を果たす。秋のプレミア12にも召集されるなど、アメリカ球界を離れてからむしろ存在感を増している。

ジェア・ファンボルクロ
23歳 ※WBC開幕時点 本職:捕手、外野手 右投右打
2002年7月10日生/出身地:オランダ アムステルダム
 捕手と両翼を守れる稀なタイプの若手ユーティリティ。プレミア12や侍ジャパンとの強化試合で代表として来日している。

 長打力こそ乏しいがかなりの待ち球系で、フォアボールを多く選ぶ打撃スタイルをしている。母親がスリナム出身とされ、野球ではレアなスリナム系オランダ人。12歳という比較的遅い年齢で野球を始めた。

その他の選手 ユルディオン・マルティー

◇内野手/ユーティリティ
ザンダー・ボガーツ (サンディエゴ・パドレス)
33歳 ※WBC開幕時点 本職:遊撃手、二塁手 右投右打
1992年10月1日生/出身地:アルバ オラニェスタット
オールスターx4 シルバースラッガーx5 WBC2013 WBC2017 WBC2023
 レッドソックスの超有望株として大きな期待を受け、2014年にメジャーデビュー。これまで打撃タイトルこそ無いものの、毎年のように打率3割前後をキープし、オールスターレベルの遊撃手として活躍してきた。

 2023年から11年2億8000万ドルの超大型契約でパドレスに移籍。しかし、以降はボストン時代の成績を下回るシーズンが続き、苦戦中。守備でもゴールドグラバーの金河成(キム・ハソン)にポジションを譲る形でセカンドに回ることもあった。

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オジー・アルビーズ (アトランタ・ブレーブス)
29歳 ※WBC開幕時点 本職:二塁手 右投両打
1997年1月7日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
オールスターx3 シルバースラッガーx2
 小柄ながら通算rWAR20超を記録している両打ちの実力派二塁手。プロ入り以来ブレーブス一筋でプレーし、長年にわたりレギュラーの座を守ってきた本物のフランチャイズプレイヤー。

 しかし、2023年の故障離脱以降は打撃成績の悪化もあり、立場が揺らぎつつある。ちなみにその時のケガが原因で、前回WBCは代表入りを辞退している。

 日本語表記では、オルビーズ派とアルビーズ派がいる。

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デイソン・クルース (ジャイアンツ傘下A+)
26歳 ※WBC開幕時点 本職:二塁手、三塁手 右投左打
1999年10月8日生/出身地:アルバ ノールト
 アルバ島出身のヒッティングマシーン。大学時代をイリノイ州などで過ごしたが、MLBドラフトにはかからず、独立リーグ(アメリカン・アソシエーション)からプロキャリアをスタートした。

 そこで2年連続で高打率を記録し、活躍が認められて今季からジャイアンツ傘下のマイナーでプレー中。遠回りした影響で年齢はすでに20代後半だが、下位リーグながらも打率3割を維持している。

 とはいえ、守備は二塁・三塁までが限界で、ショートを任されるほどの信頼は得ていない。また、パワーに欠けてシングルヒットが多いのも、今後のキャリアにおいて障害になるかもしれない。

ジュルドリック・プロファー (ホワイトソックスRkリーグ)
18歳 ※WBC開幕時点 本職:遊撃手、二塁手 右投右打
2007年4月24日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
 年が離れているせいかあまり知られていないが、プロファーも実は3兄弟であり、ジュルドリックはその末っ子。長兄ジュリクソン・次兄ジュレミの若い頃と同じく、彼もショートを本職としている。

 驚くべきことに、この三兄弟はいずれもリトルリーグ・ワールドシリーズ(LLWS)に出場した経験を持つ。兄弟3人がLLWSに出場したケースは極めて珍しく、ミシガン州のヒル三兄弟に次いで史上2組目。ただしヒル兄弟はいずれもメジャーに近づけていない点で、プロファー兄弟の方が一歩抜きん出ているといえる。

ディディ・グレゴリウス (メキシカンリーグ)
36歳 ※WBC開幕時点 本職:遊撃手 右投左打
1990年2月18日生/出身地:オランダ アムステルダム
WBC2017 WBC2023
 2010年代に輝かしい実績を残した元メジャーリーガー。デビューしたての頃はショートの守備力を評価され”ディディ・ディフェンス”と名付けられた華麗な守備を見せていた。ヤンキースに移籍してからは急に長打を打てるようになり、コンスタントにシーズン20本塁打を記録していた。

 価値の高い「打てるショート」として活躍していたが、2020年代に入って急激に衰え、最近はメキシカンリーグなどでプレーを続けている。ちなみに生まれはオランダ本土だが、ほどなくして父の故郷であるキュラソーに移住している。

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ジョナサン・スコープ (メキシカンリーグ)
34歳 ※WBC開幕時点 本職:二塁手、一塁手 右投右打
1991年10月16日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
オールスターx1 WBC2013 WBC2017 WBC2023
 メジャー通算174本塁打の元レギュラー二塁手。オリオールズやタイガースなど低迷期のMLB球団で正二塁手を務め、毎年20本前後のHRを安定して打っていた。

 だが、前回WBCのあった2023年シーズンに深刻な打撃不振に陥り、メジャーの座を追われた。現在はメキシカンリーグでプレーしている。

ジュレミ・プロファー
30歳 ※WBC開幕時点 本職:三塁手、一塁手 右投右打
1996年1月30日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2023
 ジュリクソン・プロファーの弟で名前も似てるため、メジャー未経験にしては知名度のある元マイナーリーガー。最高位は3A。今でも1A+~2Aクラスの実力はありそうだが、アメリカを離れているため国際大会に参加しやすく、オランダ代表では常連になっている。

 若い頃は兄と同様にショートを守っていたが、ベテランになって一塁・三塁の両コーナーに回っている。

シャーロン・スコープ
38歳 ※WBC開幕時点 本職:内野手 右投右打
1987年4月15日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2009 WBC2017 WBC2023
 プロファー兄弟とは逆の境遇にある元マイナーリーガー。弟のジョナサンはメジャーの正二塁手になったが、シャーロンは打撃で苦戦。3Aに昇格した年は4年もあったが、結局メジャーには上がれなかった。

 次回のWBC代表候補に挙げてみたものの、2024年オフのウィンターリーグに姿を見せず。もうプレイヤーとしては出てこないかもしれない。

ザンダー・ウィール
33歳 ※WBC開幕時点 本職:一塁手、左翼手、右翼手 右投右打
1993年1月11日生/出身地:アメリカ合衆国 テネシー州マーフリーズボロ
WBC2023
 運悪くメジャーリーガーになれなかったホームランバッター。テネシー州生まれのアメリカ人で、大学は超強豪バンダービルト大でプレーした。ミネソタ・ツインズに入団後、2019年に3Aで24本塁打を放ったがメジャーには呼ばれず、コロナ明けの2021年に大腿四頭筋の大ケガをきっかけにDFAとなった。

 2022年から昨季まで独立リーグ(アトランティック・リーグ)に所属。3年間で91ホーマーと持ち味を発揮した。

 バスケットボール選手だった父親がキュラソー出身のため、オランダ代表資格を持っている。前回WBCで初めて代表に選ばれたものの、試合には出場しなかった。

スタイン・ファンデルメール
32歳 ※WBC開幕時点 本職:遊撃手?UT? 右投左打
1993年5月1日生/出身地:オランダ 北ブラバント州ロスマレン
WBC2017
 オランダ国内リーグで毎シーズン高打率をマークし続けている遊撃手。オランダ本土出身者だが若い頃はラマー大学(テキサス州)でプレーし、MLBドラフトを経てアストロズ傘下に所属していた。

 マイナーではパワー不足で出世できなかったが、アマチュア時代から選球眼が非常に優れている。ホーフトクラッセで三振数の数倍に及ぶ四球を稼いでおり、バッティングの完成度では敵なしといった状態。

ユージン・ヘルダー
30歳 ※WBC開幕時点 本職:一塁手 右投右打
1996年2月26日生/出身地:アルバ オラニェスタット
 新型コロナ前まではマリナーズ傘下でプレーしていた内野手。マイナー時代はサードのほか二遊間も守れるユーティリティだったが、どちらかというと打撃が得意で、徐々に一塁手にシフトしていった。

 新型コロナでマイナーリーグの全試合が中止になったのをきっかけにヨーロッパへ渡り、イタリア→チェコ→イタリアでプレーを続けている。ヨーロッパでプレーしているが本土出身ではなく、アルバ島の生まれ。

その他の選手 ウォーレン・ホルツェマー、シェライベン・ニュートン、ジュニア・マルティナ、チリキ・ケンプ

◇外野手
セダン・ラファエラ (ボストン・レッドソックス)
25歳 ※WBC開幕時点 本職:中堅手、内野手 右投右打
2000年9月18日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
 二遊間とセンターをハイレベルにこなす、才能の塊のようなスター候補生。小柄だが長打力と高い守備力を兼ね備えており、レッドソックスが得意とする育成パターンにしっかり嵌っている。2026年のWBCでは一気に名前が売れるかも。

 ちなみに彼のフルネームは”Ceddanne Chipper Nicasio Marte Rafaela”なのだが、母親が大のブレーブスファンだったことから、ミドルネームにあの殿堂入り三塁手チッパー・ジョーンズの名前が刻まれている。

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リッチー・パラシオス (タンパベイ・レイズ)
28歳 ※WBC開幕時点 本職:外野手 右投左打
1997年5月16日生/出身地:アメリカ合衆国 ニューヨーク州ブルックリン
WBC2023
 兄のジョシュとともに兄弟メジャーリーガーになった外野手。ニューヨーク・ブルックリン地区で育った。

 父親はプエルトリコ系で、父方の叔父レイは元メジャーリーガー。一方で母親がキュラソー出身のため、オランダ代表に召集された経験がある。母親の叔父がヘンスリー・ミューレンス元監督と知人だった縁があり、オランダ代表入りの方がスムーズに進みそう。

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ジュリクソン・プロファー (アトランタ・ブレーブス)
33歳 ※WBC開幕時点 本職:中堅手、遊撃手、二塁手 右投両打
1993年2月20日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
WBC2013 WBC2017 WBC2023
 かつてレンジャースの正遊撃手エルビス・アンドレスの後釜として期待された元・超有望株。マイナー時代にみんなが期待したようにはならなかったが、内外野をこなしながら”打てるユーティリティ”に活路を見出し、メジャー定着に成功した。

 ただし、今季から長期契約を結んだばかりなのに、矢先の開幕直後に禁止薬物使用が発覚。80試合の出場停止処分となり、関係者とファンを大いに失望させた。

ジョシュ・パラシオス (シカゴ・ホワイトソックス)
30歳 ※WBC開幕時点 本職:外野手 右投左打
1995年7月30日生/出身地:アメリカ合衆国 ニューヨーク州ブルックリン
WBC2023
 リッチー・パラシオスの兄。ジョシュは弟ほど有望扱いされなかったが、こちらもスピードがウリで外野3ポジションを守ることができる。

レイ=パトリック・ディダー
31歳 ※WBC開幕時点 本職:遊撃手、外野手 右投右打
1994年10月1日生/出身地:アルバ オラニェスタット
WBC2023
 アルバ出身のユーティリティで、スピードを武器に二遊間とセンターをこなす。昨季までパドレス傘下のマイナー上位(2A~3A)でプレーしていた。

 打撃には課題があり、四球を選べることで出塁率は高めだが、三振が四球の倍以上もあり、実態は待ち球系というよりバットに当たらないタイプ。コンタクト能力に問題を抱えている。

カイ=レン・ニカシア (ブリュワーズ傘下A+)
23歳 ※WBC開幕時点 本職:外野手 右投両打
2002年4月10日生/出身地:オランダ 北ブラバント州オス
 小柄だがパワーとスピードに優れるアスリートタイプの外野手。オランダ本土生まれだが両親はともにキュラソー出身で、本人は移住先のフロリダで育った。

 高校からドラフト16巡目でブリュワーズに指名され入団。当初は内野手だったが、ルーキーリーグの段階で外野へコンバートされた。

 今季は初めての1A+でフルシーズンに挑戦。誕生日の試合では自身初のマルチ本塁打を記録し、しかも2本目は延長10回に放った満塁弾だった。

 ただし、バッティングは両打席とも打率が低く、特に左打席での課題が多い。「1、2の3」のタイミング打ちで大きな当たりを打っているが、直した方がいいかもしれない。

ドリュー・ジョーンズ (Dバックス傘下A+)
22歳 ※WBC開幕時点 本職:中堅手 右投右打
2003年11月28日生/出身地:アメリカ合衆国 ジョージア州アトランタ
 アンドリュー・ジョーンズの息子、ドリュー・ジョーンズ。2022年に高校生ながらドラフト全体2位で指名され、ダイヤモンドバックスに入団した。

 今季はシングルA+で苦戦中。殻を破ってほしい。

ジオンディド・トロンプ
32歳 ※WBC開幕時点 本職:外野手 右投右打
1993年9月27日生/出身地:アルバ オラニェスタット・ノールト
 パワーとスピードに自信を持つ外野手で、チャドウィック・トロンプの実兄。新型コロナ前はフィリーズ傘下でプレーし、3Aまで昇格した。

 長打を打てるが選球眼が怪しい、という打撃スタイルは弟とよく似ている。一方で、外野3ポジションを満遍なく守れる汎用性は大きく異なる長所である。

デラーノ・セラッサ
26歳 ※WBC開幕時点 本職:内野手、右翼手 右投右打
1999年10月25日生/出身地:オランダ
 2023年にホーフトクラッセで盗塁王に輝いた俊足のユーティリティ。内野手を本職としながら、その脚力を生かして外野もこなす。近年はプレミア12や欧州代表に選出されることが増え、登録は外野手となっている。

 オランダ生まれなのは確かだが、Baseball Reference に出身地が載っていない。かつて所属していたHCAWの本拠地に因んで北ホラント州ブッスム出身とする媒体もあるが、信憑性に欠ける。

ドウェイン・ケンプ
38歳 ※WBC開幕時点 本職:二塁手、外野手 右投両打
1988年2月24日生/出身地:オランダ ロッテルダム
WBC2017
 WBCに2度、プレミア12には3度も出場しているベテランのユーティリティプレーヤー。セカンドを中心に、外野やキャッチャーまで可能な守備力と、走攻守いずれもバランスの取れたプレースタイルが持ち味。

 スピードが最大の武器だったが、2026年WBCの開催時には38歳を迎えるだけに、その走力をどこまで維持できているかが注目される。

ドノバン・アントニア
22歳 ※WBC開幕時点 本職:外野手、二塁手、捕手 右投右打
2003年8月13日生/出身地:キュラソー ウィレムスタット
 身体能力が高いアスリートタイプのユーティリティ。足が速いためセンターをメインに外野3ポジションを守るほか、セカンドも可能。そのうえ侍ジャパン強化試合ではキャッチャー登録だった。

ダンゼル・リチャードソン
32歳 ※WBC開幕時点 本職:左翼手、右翼手 右投右打
1994年1月7日生/出身地:シント・マールテン フィリップスブルフ
 シントマールテン島から来たパワーヒッター。まだ30代前半だが、2016年頃までロッキーズ傘下のマイナー下部でプレーしていた。それ以降は米独立リーグやホーフトクラッセなどに所属し、今季はメキシカンリーグにいる。

 完全に打撃型のプレイヤーで、ポジションは外野両翼がメインだができれば指名打者で起用したい。

その他の選手 アデマール・リファエラ、ダーネル・コリンズ、ルシェンテン・トムスヤンセン、ジェイキー・ホセファ、カリム・アユビ
◇監督/主なコーチ/GM
監督 アンドリュー・ジョーンズ
通算rWAR:62.7
殿堂入り オールスターx5 ゴールドグラブx10 シルバースラッガーx1 ホームラン王x1 打点王x1 WBC2006 WBC2013
 これまでオランダ代表の指揮は元NPB戦士のヘンスリー・ミューレンスが長く担ってきたが、2026年WBCでは、ついに殿堂入りメジャーリーガーが満を持して監督に就任。

 メジャー通算434本塁打、ゴールドグラブ賞10回と、名実ともに歴代最高レベルの実績を持つ。

 ただし監督としての力は未知数。オランダ代表は、本土出身とアルバ・キュラソーなどカリブ組の選手をどう起用するか?という特有の難しさがあり、新任監督の手腕が試される。

◇参考1:過去の名選手
 バート・ブライレブン
通算rWAR:94.5
殿堂入り オールスターx2 最多奪三振x1
 メジャー通算287勝を挙げた元レジェンド投手。オランダ本土出身者では桁外れのrWAR 94.5(!)も積み上げ、殿堂入りも果たしている。

 オールスター2回、サイ・ヤング賞トップ4入り3回、rWARリーグ最高も2度(当時WARは無かったが…)記録している一方で、なぜかMVP投票では一度も10位以内にすら入ったことがない。実績のわりに地味な選手というイメージだった。

 ちなみに、1シーズン50被本塁打というMLBワースト記録保持者でもある。これはホームランの出やすいメトロドームで、縦カーブを武器にストライクゾーン高めで勝負する配球が影響していたとされる。

 シドニー・ポンソン
通算rWAR:11.1
WBC2009
 ボガーツがブレイクする前は、アルバ島の野球選手といえばポンソンだった。表ローテの先発投手としてオリオールズで活躍したが、かなりの問題児としても有名だった。

 ロジャー・バーナディーナ
通算rWAR:1.4
WBC2013 WBC2023
 メジャー好きからの人気が高かった元外野手。2008年にワシントン・ナショナルズでメジャーデビュー、一時期外野のレギュラーを掴みかけ7年で548試合に出場した。

 全盛期を過ぎた後は韓国や台湾などに渡ったほか、石川ミリオンスターズ(BCリーグ)と契約合意したが来日しなかったことがあった。

 ジェア・ジャージェンス
通算rWAR:10.4
オールスターx1 WBC2017
 2000年代のアトランタ・ブレーブスには、エースではないが味のある先発投手がよく頭角を現していた。ジャージェンスもその1人。ブレーブスの先発ローテで投げ、2ケタ勝利を3度記録した。

 スペイン語圏ではJを発音しないため「エア・ユリエンス」と表記されることもあったが、メジャー公式の発音ガイドでは「ジェア・ジャージェンス」が正しい読み。

 アンドレルトン・シモンズ
通算rWAR:36.5
ゴールドグラブx4 プラチナゴールドグラブx1 WBC2013 WBC2017 WBC2023
 ブレーブスでのメジャーデビュー後、すぐに超ハイレベルな守備で名を馳せた名ショートストップ。キャリア中盤はエンゼルスに在籍し、大谷翔平とも一時期チームメイトになった。

 10年ぐらい前までオランダ代表といえば、シモンズを筆頭にグレゴリアス、ボガーツ、プロファーらが揃う”ショートの宝庫”だったのに、近年はむしろ人材難になっている。

◇参考2:日本に来た助っ人外国人
ヘンスリー・ミューレンス (千葉ロッテマリーンズ1994, ヤクルトスワローズ95~96)
ランドール・サイモン (オリックス・バファローズ2005)
アンドリュー・ジョーンズ (楽天イーグルス2013~14)
ウラジーミル・バレンティン (ヤクルトスワローズ2011~19, SBホークス20~21)
リック・バンデンホーク (SBホークス2015~20, ヤクルトスワローズ21)