2023年12月、FAとなっていた大谷翔平のドジャース入団が決まった。スポーツニュースのみならずワイドショーなどでも大きく取り上げられていたが、ドジャースというチームを紹介する中で「路面電車をよける人々」という”トロリードジャース”から由来する、という紹介のされ方をしていた。
MLB名鑑.comでも各チーム情報のカテゴリーでチーム名の由来を紹介しているが、全30球団の由来をまとめてみた。※チーム情報のページと重複する箇所があるのはご容赦いただきたい。
①生き物
②街の象徴
③市民
④街の愛称
⑤靴下
⑥原住民族
⑦その他
①生き物由来
ボルティモア・オリオールズ | メリーランド州の州鳥”ボルティモアオリオール” |
タンパベイ・レイズ | Raysは光線だが、球団創設時の名称デビルレイズがイトマキエイ科のデビル・レイ由来 |
トロント・ブルージェイズ | 北米東部に生息するアオカケス |
マイアミ・マーリンズ | フロリダ湾の海に生息しているマカジキ。 |
セントルイス・カージナルス | ミズーリ州の州鳥ショウジョウコウカンチョウ |
アリゾナ・Dバックス | アリゾナ砂漠に生息するダイヤガラガラヘビ |
代表的なチーム名の由来は街を象徴する生き物だろう。ボルティモア、トロント、セントルイスの3羽は地域に生息する鳥の名前から来ている。
なお、デトロイト・タイガースとシカゴ・カブスにも生き物の名前が付いているが、動物由来でないためここにはカテゴライズしなかった。
②街の象徴
クリーブランド・ガーディアンズ | クリーブランド市内にある”ガーディアンズ・オブ・トラフィック” |
デトロイト・タイガース | ミシガン州最古の陸軍部隊の愛称がタイガースだったから |
カンザスシティ・ロイヤルズ | カンザスシティが”アメリカン・ロイヤル・ライブストック・アンド・ホース・ショー”という家畜の品評会や馬術競技が行われるイベントの開催地だから。 |
ヒューストン・アストロズ | ヒューストンにはNASAがあり、アストロノーツを縮めたもの |
シアトル・マリナーズ | 海の街を象徴する”水兵”。一般公募により決定 |
テキサス・レンジャース | 200年以上前にルーツを持つ自警団Texas Ranger |
ミルウォーキー・ブリュワーズ | 醸造者。ミルウォーキーがビールの生産地として有名なため |
コロラド・ロッキーズ | コロラド州デンバーの象徴ロッキー山脈。 |
サンディエゴ・パドレス | パドレはスペイン語で司祭や神父。大昔、サンディエゴを拠点にキリスト教がカルフォルニア州各地に広まっていったことから。 |
生き物以外で街を象徴する”何か”を採用した球団も多い。宇宙飛行士のアストロズやビールのブリュワーズのように直感的に分かりやすいのも特徴だ。
クリーブランド・インディアンスは人権団体からの圧力に負け、2022年のシーズンからガーディアンズに変更。コロラド・ロッキーズは1993年の球団創設時に”ベアーズ”を望むファンが多くいたが、オーナーの意向でロッキーズとなった。
③市民
ニューヨーク・ヤンキース | 昔オランダ人がニューイングランド地方の住民のことを”Jan kees”と呼んでいた |
ニューヨーク・メッツ | 都会人の意味のメトロポリタンを縮めたもの |
フィラデルフィア・フィリーズ | フィラデルフィア市民の通称”フィリー” |
ロサンゼルス・ドジャース | 路面電車が多く走行していたブルックリン地区の住民”トロリー・ドジャース(路面電車をよける者達)” |
大谷の移籍で話題になったドジャースのように、その街の住民が由来になっているものがある。
ニューヨーク・ヤンキースの前身ハイランダーズはスコットランド北部の軍隊に因んでいたが、地元の新聞社がヤンキースと呼ぶようになり定着した。100年以上前の新聞社はインク代が安く済むという理由で短い愛称を好んだと言われ、ヤンキース以外にシカゴ・カブスも同じような理由でチーム名が定着している。
④街の愛称
ミネソタ・ツインズ | 本拠地ミネアポリスとセントポールが双子都市(ツインシティー)だから |
ロサンゼルス・エンゼルス | スペイン語のロサンゼルス(天使たち)に対する英語”the angels” |
ワシントン・ナショナルズ | ワシントンD.C.は政治的な中心地であり、アメリカ合衆国のナショナルなイメージを表している |
街そのものが由来になっているチームがある。多少安直な印象は否めないが分かりやすい。
⑤くつした
ボストン・レッドソックス | 赤いソックスを履いてプレーした |
シカゴ・ホワイトソックス | 白いソックスを履いてプレーした |
シンシナティ・レッズ | レッドストッキングスの略 |
都市やファンベースと直接関係ないものもある。代表的なのが靴下由来のチームで、3球団が存続している(2023年現在)。
レッズはレッドストッキングスが縮まったもの。大昔はセントルイス・カージナルスの前身ブラウンズなどがあった。また、デトロイト・タイガースはトラ柄のソックスを履いてプレーしていたからという説があるものの劣勢である。
⑥原住民族
アトランタ・ブレーブス | インディアンの羽根飾り |
原住民族に敬意を表して名付けられた例もある。アトランタ・ブレーブスの前身は19世紀より幾度となくオーナーとチーム名が変わっていたが、民主党と関わりがあるオーナーになったとき、党の組織のシンボルである”ブレーブス”(=インディアンの羽根飾り)を採用してから定着した。
チャンスの場面で観客がやる”トマホーク・チョップ”もインディアン由来である。
ただ、アメリカ全体でインディアン・マスコットや応援スタイルは人権団体から根強い批判を浴び続けており、2021年オフにクリーブランド・インディアンスがガーディアンスへ変更を強いられたように、ブレーブスもチーム名とロゴ変更の圧力を受けている。
⑦その他
残り4球団はどれにも当てはまらなかった”その他”といえる。
オークランド・アスレチックス | 1860年代初頭のフィラデルフィア・アスレチック・ベースボールクラブ |
シカゴ・カブス | 不明。若く経験が浅い選手が多かったから? |
ピッツバーグ・パイレーツ | スター選手を引き抜いた行為を「海賊まがい」と非難されたのを面白がった |
サンフランシスコ・ジャイアンツ | 諸説あり |
シカゴ・カブスは、誰がカブスと言い出したか分かっていないが、少なくとも熊が名物だからではない。1900年代初頭の混乱期に主力が流出した時期があり、若い・経験が浅い選手が多くなったことを揶揄したものと考えられている。ただ、地元の新聞社がインクの節約目的でカブスの名称を積極的に使った影響もある。
パイレーツの海賊はこちらも1900年代初頭の混乱期、ピッツバーグ・アレゲニーズ(ピッツバーグ近郊にはアレゲニー川が流れている)がどさくさに紛れてスター選手を引き抜いた行為を「海賊まがい」と非難されたことが由来。そのままチーム名にしてしまった。
ジャイアンツについては諸説あり、監督が”My big fellows! My giants!”と叫んだ説、チームに高身長の選手がいた説などあるがはっきりしていない。
<MLB名鑑.com専属コラムニスト> デッドボーラー